腰縄をつけられると卑屈になるものらしいが、この男もうつむき加減で猫背気味になっている。

裁判官がいかめしい口調で開廷を宣言する。

（傍聴席は）四席一ブロックが三つ並んで一列。それが三列あって三十六席。大手の新聞やテレビの報道記者には最前列に記者席が設けられているが、マスコミ陣はもちろんそれだけではない。週刊誌やフリーの記者などもこぞってやってきているようだ。 　勲ら裁判官が入廷した瞬間から、傍聴席の後方中央に設置されたＮＨＫのテレビカメラが回り始めている。報道各社を代表しての撮影だ。カメラクルーの隣には 訟廷 管理官 がストップウオッチを片手にして立ち、撮影時間として取り決められている二分間を計っている。

（裁判官）黒い法衣をまとった姿は、厳格な学者然としている。

検事と弁護士がとめどなく屁理窟を並べ立てる。

ふたつの選択肢の間で、正直、佃製作所の社内は真っ二つに割れたままだ。みんなの意識は統一されていない。

石投げのようなけんか腰の討論が続く

「室内でもめてると息がつまってくるから。すぐ外に出ちゃうんだ。それで仲直りしたりね。」

後味の悪い口論

いがみ合う

言葉で謝罪の綾をつづる

のらりくらりとかわす

不服そうに口を尖らせた。

油紙に水を注ぐように、跳ねつけて

意見がツブテのように飛び交う

理科室の水槽の磯臭いにおいを乗せた窓からの風

強い潮の香に混って、瀝青（チャン）や油の匂いが濃くそのあたりを立て罩（こ）めていた。

果物屋ではリンゴにみがきをかけている男がいる。

果物店で、西瓜（すいか）がまっかに眼にしみる。

新幹線の細長い顔が滑らかに現れる。