糸の縫い目に、白い埃のように虱（しらみ）たちがじっとかくれている

緑色の刃を振りたてたカマキリの殺気

虫類は嫌いであり、この手懐（てなず）ける術のない、えたいの知れぬ一味は、高圧線のように怖っかなかった

不気味な艶を浮かべた甲虫

ポプラの幹に止まっていた硬い殻を持った虫が、風で強められた雨に飛ばされて、流れる水に逆らって進もうとしている。《…略…》街灯に照らされたその背中を、最初ガラスの破片と見間違えた。

みいんみいんと暑くるしく蝉が啼きたてている。

細く光っている蜘蛛の糸

たくさんの蝉が松の枝にしがみついて、声を限りに鳴いていた。夏は今が盛りだったが、蝉たちはそれが長くは続かないことを承知しているようだった。彼らは残された短い命を慈しむように、声をあたりに轟かせていた。

蜜蜂は自分の机に辿りついたらしく、カタコト音をさせた

えんじ色のチューリップが一列咲いていた。蜜蜂が一匹、コップ型の花びらの中を見え隠れしていた。