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彼女は男が、娘や私たちを認めて、歩を運び出した刹那せつなに、「あたし――」といって、かなりあらわに体をふるわして、私の肩につかまった。その掴り方は、彼女の指先が私の肩の肉に食い込んで痛いくらいだった。ふだん長い睫毛まつげをかむって煙っている彼女の眼は、切れ目一ぱいに裂けひろがり、白眼の中央に取り残された瞳は、異常なショックで凝ったまま、ぴりぴり顫動せんどうしていた。口も眼のようにたてに開いていた。小鼻もあえいで膨らみ、濃いまゆと眉の間の肉をかぶる皮膚が、しきりに隆まりゆがめられ、彼女に堪え切れないほどの感情が、心内に相衝撃するもののように見えた。二三度、陣痛のようにうねりの慄えが強く、彼女の指先から私の肩の肉にみ込まれ、同時に、彼女から放射する電気のようなものを私は感じた。私は彼女が気が狂ったのではないかと、おそれながら肩の痛さに堪えて、彼女の気色をうかがった。
※備考※ 会えない婚約者とのふいの再会
岡本かの子 / 河明り ページ位置:79% 作品を確認(青空文庫)
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驚いた表情
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前後の文章を含んだ引用
......見物場所はきまっているからと云って男は朗に笑った。  私は男がこの座敷へ近寄って来るわずか分秒の間に、男の方はちらりと一目見ただけで、娘の態度に眼が離せなかった。  彼女は男が、娘や私たちを認めて、歩を運び出した刹那せつなに、「あたし――」といって、かなりあらわに体をふるわして、私の肩につかまった。その掴り方は、彼女の指先が私の肩の肉に食い込んで痛いくらいだった。ふだん長い睫毛まつげをかむって煙っている彼女の眼は、切れ目一ぱいに裂けひろがり、白眼の中央に取り残された瞳は、異常なショックで凝ったまま、ぴりぴり顫動せんどうしていた。口も眼のようにたてに開いていた。小鼻もあえいで膨らみ、濃いまゆと眉の間の肉をかぶる皮膚が、しきりに隆まりゆがめられ、彼女に堪え切れないほどの感情が、心内に相衝撃するもののように見えた。二三度、陣痛のようにうねりの慄えが強く、彼女の指先から私の肩の肉にみ込まれ、同時に、彼女から放射する電気のようなものを私は感じた。私は彼女が気が狂ったのではないかと、おそれながら肩の痛さに堪えて、彼女の気色をうかがった。自分でも気がつくくらい、私の唇も慄えていた。  男は席につくと、私に簡単に挨拶あいさつした。 「木下です。今度は思いがけないご厄介をかけまして」と頭を下げた。  それから社長......
単語の意味
煙る・烟る(けむる・けぶる)
気色(きしょく)
顫動(せんどう)
喘ぐ(あえぐ)
凝る(こる・こごる)
体(からだ)
白眼(はくがん・しろまなこ)
小鼻(こばな)
指先(ゆびさき)
刹那(せつな・せちな)
うねり(うねり)
煙る・烟る・・・霧やかすみなどで辺りがぼやける。白煙や色のある煙がもくもくと出て、辺り一面に広がる様子。
気色・・・顔色。表情。気持ち。気分。
顫動・・・細かく震えて動くこと。
喘ぐ・・・1.苦しむように息をする。息を切らす。
2.貧しさや精神的なプレッシャーに苦しんで悩む。
凝る・・・1。ある物事に度を越して心がとらわれる。熱中して打ち込む。ふける。(こる)
2.体が部分的に血行不良になり、筋肉が張った感じになる。(こる)「肩がこる」
3.細かいところまでいろいろと工夫する。趣向を凝らす。(こる)
4.一箇所に集まって、固まる。(こる・こごる)
5.液状のものが冷えて、ゼリーのように固まる。(こごる)
・・・頭・胴・手足など、肉体全体をまとめていう言葉。頭からつま先までの肉体の全部。身体。体躯。五体。健康。体力。
白眼・・・1.眼球の白い部分。
2.冷たい、悪意のこもった目つき。冷淡な、軽蔑した目つき。白い目。晋の阮籍(げんせき)が、好感のもてる人は青眼で迎え、嫌な人は白眼で迎えたという「晋書」阮籍伝の故事より。 ⇔ 青眼(せいがん)。
小鼻・・・鼻の穴の外側の丸くふくらんでいる部分。鼻柱の左右のふくらみのところ。鼻翼(びよく)。
指先・・・手や足の、指の先端。指の先っぽ。指頭(しとう)。指端(したん)。
刹那・・・1.仏教の時間の概念で最小の単位。ちょっとの間。きわめて短い時間。一瞬。指を人はじきする短い時間(=弾指[だんし]という)に65刹那あるという。 ⇔ 劫(こう・ごう)。
2.数の単位としては、弾指の10分の1。
うねり・・・うねること。

1.大きく緩やかに曲がりくねること。大きく緩やかに上がったり下がったりすること。
2.1の状態が続くこと。1の状態がとどめ難い勢いで攻めてくること。「感情のうねり」「業界再編のうねりの中で」
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「任意同行だと──」  重藤が眉を上げた。
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
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私がきゃあ、と言い、弟はビクッとして飛び上がった。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
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フェレイラの眼にまた挑むような鋭い光が走った。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
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