渋谷のスクランブル交差点は、今日も切れ目の無い雑踏で覆い尽くされている

歩行者用信号が青になり、足を踏み出すと、それとほぼ同時に、他の歩行者もいっせいに歩きはじめた。交差点を埋め尽くす、ちょっとした陣取りの争いにも見えた。

交差点にひしめき合う車の群れは、パニックに襲われた野鼠のように甲高い悲鳴を上げながら

この交差点はとてもグロテスクな形をしていた。まるで巨人が造った広い道路と小人たちが造った細い路地が交わっているように見えるのだ。 　たとえば広い国道のほうから走ってくると、直角に右へ曲がっているＬ字型の道にしか見えない。しかし実際はＬ字型カーブと見えた先には細い路地が伸びており、国道と平行に走る水路にかかる小さな橋がある。そしてこの水路が、昭和四十六年に埋め立てが完了し、沖合の島が陸続きになるまでの海岸線だったのだ。 　陸続きになった島には造船所の巨大なドックがある。これが巨人の街だ。そして海岸線を奪われた以前の漁村には、未だに細い路地が張り巡らされている。

川と交差する形で、旧伊勢街道が通っている。

（月光に照らされた岩山の道）歩を止めて背後を振り返った。下りの坂道が、まるで巨大な虫が這ったあとのように白くぬめりながら町まで続いていた。

アーケエドのように枝を延ばした欅（けやき）並木

林を抜ける未舗装路があった。道路というよりは、車の轍（わだち）だけで成り立っているような踏み分け道だ。二本の轍の間には緑の草がたっぷりと茂っていた。

線路は丘陵に沿って、まるで定規でもあてたようにぐいと一直線にのびていた。

延々何百哩（マイル）の鉄道は、長蛇の如く野を走り、山を貫き