野も丘も雨に煙っていた。風と音が来て、雨が幕を引くように、片側から風景を打ち消した。
大岡 昇平「野火(新潮文庫)」に収録 ページ位置:64% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
雨の景色、視界
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......、米軍がいて通れやしねえぜ」 彼はへたへたとそこへ坐った。私は彼の身につけたもので、私の持ってないものは何もないのを、ゆっくり眼でたしかめてから、通り過ぎた。 野も丘も雨に煙っていた。風と音が来て、雨が幕を引くように、片側から風景を打ち消した。 夜、なおも雨が降り続ける時、私は濃い葉蔟の下を選んで横わった。既に蛍の死んだ暗い野に、遠く赤い火が見えた。何の灯であろう。雨の密度の変移に従って、暗く明るくま......
単語の意味
煙る・烟る(けむる・けぶる)
風景(ふうけい)
煙る・烟る・・・霧やかすみなどで辺りがぼやける。白煙や色のある煙がもくもくと出て、辺り一面に広がる様子。
風景・・・自然の景色。目の前に広がる眺め。その場の情景。
ここに意味を表示
雨の景色、視界の表現・描写・類語(雨・霧のカテゴリ)の一覧 ランダム5
鼠色 の道に 溜まった雨水が、行き交う人の服の色を反射している。
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 amazon
雨に濡れた街の景色が重かった。
吉田修一「悪人」に収録 amazon
雨に濡れた往来が街の灯りを美しく照りかえしていた。
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 amazon
(空港の風景)十一月の冷ややかな雨が大地を黒く染め、雨合羽を着た整備工たちや、のっぺりとした空港のビルの上に立った旗や、BMWの広告板やそんな何もかもをフランドル派の陰うつな絵の背景のように見せていた
村上春樹 / ノルウェイの森 amazon
このカテゴリを全部見る
「雨・霧」カテゴリからランダム5
動いている人が影のように見え、次第に霧に呑まれて薄らいでいく
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
同じカテゴリの表現一覧
雨・霧 の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ