（暗い窓ガラス）暗い窓ガラスが鏡のように自分の姿を映した。《…略…》窓に近づくと、 暗闇 でしかなかった窓の奥に、白い一点の光が浮かびあがった。さらに近づくと、その空間は画廊であり、光のように見えた点は絵画の一部だとわかった。窓ガラスに鼻が触れるほど顔を寄せて内部をのぞく。徐々に眼が暗闇になれ焦点が合ってくる。

窓ガラスに結晶する氷紋が美しい

氷のように冷ややかな鉄の扉

結露した窓

封建社会の遺物らしい城郭めいた真っ黒い門が、おどかすようにのしかかる

何も映さないスクリーンのようなカーテン

玄関のしきり障子は引手から下があらめみたいに裂けて

屋根裏部屋だったから天井は低く、立つと頭の先がわずかにベニヤ板にくっつくのである。窓も川ぞいにひとつあるだけで、夏は蒸せかえって、風ひとつ入ってこない部屋だった。

玄関の散らばっている靴は足先でどける

窓から月明かりが四角く映るベッドの中