四キロも五キロも離れたところにいた人も、一様にピカリの閃光を見て数秒後に、ドファッという音を聞いたと云っている

戦争はどんなに永くたって激しくたって一時的の嵐だもの

負傷者の血と全員の汗の臭いが混じり、奇妙な臭気を醸し出している。だが誰一人としてそれが気にならない。

敵兵の焼け焦げる臭い

爆撃機が、群がる鴉（からす）のように、執拗な襲いかかりで町を破壊する

絶体絶命の窮地に陥る

磐石のような重さをもってのしかかっている国家権力

父が病身で、入院退院をくりかえしていて、二日も会いにゆかないと、ふざけ半分、皮肉半分、「どこか、ご旅行でしたか」という。四日もゆかないと「パリへお出かけでしたか」といった。一週間、会わないと、もうすねて「あなたはどなたです」という始末であった。

胸をえぐるような苦痛な言葉

二人（ふたり）は野獣のように争った。

雨あられの砲弾の中

血腥（ちなまぐさ）い殺人仕事

祭りの終りを惜しむかのように、熱気が部屋中に漲る

海は、サンゴ礁の中とはいえ、あまり遠浅でなく泳ぎよかった。すき透った水は、まるでゼリーのように柔らかく優しく、下を見ると、きれいな魚が泳いでいた。海辺にねころんだり、本を読んだりしている人の中には、トップレスの女性も多かった。きれいな人は、美しさを誇るごとくだったが、ひどく太ったおばさんも、平気で裸になっていた。

壁に囲まれた瓦礫の世界