大福を踏み付けたような爺さん

（痩せた老人）もともと 瘦 せていたが、晩年は脂気も水気もなくなって、へし折ればペキンと音がしそうであった。廊下ですれちがうと、形も匂いも父は一本の 煙管きせる であった。

ハゲタカそっくりの老人

他に例を見ないほど見苦しい老人

とにかく目立たないこと優先で選んだようなくすんだ色の重い綿素材の長袖や半袖を何枚も着ている。同素材の重ね着という非効率的なコーディネートでは、重くて肩も凝るだろう。母がウールやダウン素材の服を買い与えても全然着ようとしない祖父には、空気の層で保温する科学的思考が欠如している。

白かった肌が、白布が日ごとに黄ばんでいくように少しずつ飴色に濁っていく

（二十歳の誕生日を迎えた翌年）十代に完全に終止符を打った。

日毎に老いの傾斜を転げ落ちる

我々はどちらも三十四歳で、それは十三歳とはまた違った意味でとても難しい年齢だった。二人とも年をとるということの本当の意味を少しずつ認識しはじめていた。そして我々はそれに対してなにがしかのもの準備しはじめなくてはならない時期にさしかかっていた。来るべき冬のあいだに体を温めてくれそうなものを確保しておくのだ。彼はそれを簡潔な言葉で表現した。 「愛」と彼は言った。

一生の秋深い晩のような老年の域に入る