(パイナップルの鉢植えを抱え寒空の下で震える)夜で、あまりホームに人がいなくて、凍えるような風が吹いていたわ。パイナップルのとげとげした葉っぱをほほにつけて、鉢植えを抱きしめてふるえて──この世に、自分とパイナップルしか今夜わかり合えるものはいないって、心から言葉にしてそう思った。目を閉じて、風にさらされて寒さに寄り添う、この二つの生命だけが同じに淋しいって。
吉本 ばなな / 満月 キッチン2「キッチン (角川文庫)」に収録 ページ位置:60% 作品を確認(amazon)
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寂しい
孤独・一人ぼっち
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前後の文章を含んだ引用
......乗れないのよ。男ってもういやだってその時、初めて思ったのかもね。でも、まあ少し落ち着いて、駅まで歩いちゃったから、ちょっと飲み屋で飲んで、電車で帰ることにした。夜で、あまりホームに人がいなくて、凍えるような風が吹いていたわ。パイナップルのとげとげした葉っぱをほほにつけて、鉢植えを抱きしめてふるえて──この世に、自分とパイナップルしか今夜わかり合えるものはいないって、心から言葉にしてそう思った。目を閉じて、風にさらされて寒さに寄り添う、この二つの生命だけが同じに淋しいって。……誰よりもわかり合えた妻は、もう、私よりもパイナップルよりも、死のほうと仲良しになってしまった。 その後すぐに妻は死んで、パイナップルも枯れたわ。あたし、世話......
単語の意味
寒空(さむぞら)
沿う・添う・副う(そう)
寒空・・・冬の寒い空。いかにも寒そうな冬の空。寒天。冬天。
沿う・添う・副う・・・1.(「沿う」と書いて)長い線状のものの近くを離れずに平行に進む。つたっていく。
2.(「沿う」「添う」「副う」と書いて)期待されるところから外れない状態を保つ。ある基準から離れないようにする。
2.(「沿う」「添う」「副う」と書いて)期待されるところから外れない状態を保つ。ある基準から離れないようにする。
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(仲よしグループから当然の絶縁を宣告され、思い当たることがない心境)どう言えばいいんだろう、まるで航行している船のデッキから夜の海に、突然一人で放り出されたような気分だった《…略…》誰かに突き落とされたのか、それとも自分で勝手に落ちたのか、そのへんの事情はわからない。でもとにかく船は進み続け、僕は暗く冷たい水の中から、デッキの明かりがどんどん遠ざかっていくのを眺めている。船上の誰も船客も船員も、僕が海に落ちたことを知らない。まわりにはつかまるものもない。そのときの恐怖心を僕は今でも持ち続けている。自分の存在が出し抜けに否定され、身に覚えもないまま、一人で夜の海に放り出されることに対する怯えだよ。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
ひどく心細い。すごくひとりぼっちな気がする。
吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 amazon
隣室のにぎやかな茶碗の音、我に遠きものあり。
林芙美子 / 新版 放浪記
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きゅんとした。少しだけ、心に影が落ちるような感じがした。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
淋しい空 になった心持ち
夢野久作 / あやかしの鼓
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寂しい虚白なものが、娘の美しさを一時飲み隠した。それは、もはや二度と誰もこういう方面に触る話をしようとするものはなくなったほど、周囲の人間に肉感的なもの、情慾的なものの触手を収斂 さす作用を持っていた。
岡本かの子 / 河明り
ぼんやりと淋しい顔をしている
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 amazon
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