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寂しい・喪失感の比喩を使った文章の一覧(110件)
胸の片隅に持ちこんできた、ものがなしく、どうにもやりきれないがらんがらんの風穴
高樹 のぶ子 / 光抱く友よ amazon
手のつけようのない数学の問題を目の前にして、時計の針を動くのを眺めているような毎日
現代の文学〈17〉安岡章太郎 amazon
独り坂道を馳(か)けおりた少年の日のように孤独
高橋 和巳 / 我が心は石にあらず amazon
さらさらと野の中に小川のように流れていて、沈殿物などどこにもない明るい孤独
石川 達三 / 独りきりの世界 amazon
邪慳(じゃけん)な風を浴びたような淋しい孤独の川に流される
林 芙美子 / 晩菊・水仙・白鷺 amazon
気の付かないうちに孤独が胸をひたし、胸の中に沈殿をつくり、セメントのようなかたまりになる
石川 達三 / 独りきりの世界 amazon
唯一人で曠野(こうや)の深い深い雪に埋もれているような心持ち
島崎 藤村 / 三人の訪問者 amazon
ボートに乗って山の中の湖を一人ぼっちで漕いでいるような
丸谷 才一 / 年の残り amazon
卵の殻で自分を包んでいるような、ひ弱な孤独
福永 武彦 / 草の花 amazon
一人ぽつんと島のように離れている
小林 多喜二 / 蟹工船 一九二八・三・一五 amazon
どう言えばいいんだろう、まるで航行している船のデッキから夜の海に、突然一人で放り出されたような気分だった@略@誰かに突き落とされたのか、それとも自分で勝手に落ちたのか、そのへんの事情はわからない。でもとにかく船は進み続け、僕は暗く冷たい水の中から、デッキの明かりがどんどん遠ざかっていくのを眺めている。船上の誰も船客も船員も、僕が海に落ちたことを知らない。まわりにはつかまるものもない。そのときの恐怖心を僕は今でも持ち続けている。自分の存在が出し抜けに否定され、身に覚えもないまま、一人で夜の海に放り出されることに対する怯えだよ。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
極地の島に一人で取り残されてしまったような激しい孤独
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
僕はたまらなく孤独だった。僕は何かにつかまりたいと思った。しかしまわりを見回しても、つかまるべきものは何もなかった。つるりとして捉えどころのない氷の迷宮の中に僕はいた。闇は白く、音はうつろに響いた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
「もし摩擦がなかったら」とその本には書いてあった。「自転の遠心力で地球上の何もかもが宇宙に吹き飛ばされてしまうでしょう」と。僕は実にそんな気分だった。@略@君がいないと僕は遠心力で宇宙の端っこの方に吹き飛んでいってしまいそうな気がするんだ。お願いだから僕に顔を見せて、僕を何処かにつなぎとめてほしい。現実の世界につなぎとめてほしいんだ。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
みんな帰っていった後の部屋はいつもより暗く感じる。光が弱くなったのではなく、光源から僕が遠去かったようだ。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
大海原に単身投げ出された孤独な漂流者のような気持ちになった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
夜中に犬の散歩をさせる孤独な老人もいる。犬も老人と同じくらい寡黙で、希望を失っているように見える。
村上 春樹 / 1q84「1Q84 BOOK 3」に収録 amazon
彼らには薄い膜が張られている。笑顔や絡まる視線などでちょっとずつ張られていく膜だ。膜は薄くて透けているのにゴム製で、私が恐る恐る手を伸ばすと、やさしい弾力で押し返す。多分無意識のうちに。そしてそんなふうに押し返された後の方が、私は誰ともしゃべらなかった時よりも、より完璧に独りになる。
綿矢 りさ / 蹴りたい背中 amazon
「楽しかったね。あー、今日のこと、早くみんなに話したいなあ。」 暗闇の中に絹代の言葉が浮いて、ぼうっと光る。みんな。そうか、今こんなに近くで話しているというのに、絹代にとっての世界は、私やにな川ではなく、彼女のグループの〝みんな〟なんだ。長い夏休みは私と絹代の間にさらに距離を生むだろう。
綿矢 りさ / 蹴りたい背中 amazon
海の真ん中で遭難した人より、もっともっと孤立していました。
サン=テグジュペリ / 星の王子さま amazon
淋しさや、孤独が、軀の芯にまで喰い込んで来た。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
魂の凍りそうな寂寞感
小田 岳夫 / 城外「城外・紫禁城の人―他二篇 (1957年) (角川文庫)」に収録 amazon
穴の中におちこむような孤独を味わっていた。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
異邦人のような寂しい気持
稲垣 足穂 / 弥勒 amazon
死にかけている老いぼれ犬の眼のような、絶望的な孤独感
安部 公房 / 他人の顔 amazon
葬式のかえりのように、さびしくて悲しかった。
獅子 文六 / 胡椒息子 (1953年) amazon
風琴がなくなった時の事を考えると、私は胸に塩が埋ったようで悲しかった。
林 芙美子 / 風琴と魚の町 amazon
わたしは囚人のように一日中じっと坐っていて、ひどく孤独でした。
大原 富枝 / ストマイつんぼ (1957年) amazon
ずしんと水底に落ちこむような孤独な気持ち。
林 芙美子 / 河沙魚「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
汐(しお)のようにひたひたと寄せてくる。
林 芙美子 / 茶色の目「林芙美子全集〈第15巻〉茶色の目 (1952年)」に収録 amazon
えたいのしれない烈しい寂寞と哀愁とが大颶風(おおあらし)のように彼に迫って来た。
相馬 泰三 / 六月 amazon
二人の放浪人が、こんな淋しいところに、落葉のように吹き寄せられている
林 芙美子 / 松葉牡丹「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
孤独は太陽のように私を灼いた。
三島 由紀夫 / 仮面の告白 amazon
エアポケットに落ち込んだように、寂しくなってしまった
村上 龍 / 恋はいつも未知なもの amazon
崖からつきおとされたように寂しくなる
島尾 敏雄 / 死の棘 amazon
孤独はどんどん肥(ふと)った、まるで豚のように。
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
孤独が、風のように鵜飼の心を過ぎ去った。
檀一雄 / 花筐「花筐・光る道 他四編」に収録 amazon
大事なものをぬきとられたようなさびしさ
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
奈落におちこむような深い孤独。
林 芙美子 / うず潮 (1964年) amazon
奈落へ突きおとされるような淋しさと焦躁
阿川 弘之 / 雲の墓標 amazon
胸の中をすうと寂しいものが、一条の飛行雲のように通り過ぎた。
木山 捷平 / 大陸の細道 amazon
私は自分の胸が空洞になり、そこをこがらしが吹きぬけるような、云いようのないかなしさに浸された。
山本 周五郎 / 青べか物語 amazon
荒寥と腕を拱(こまね)いて黒い風のように心身を吹きぬける孤独に耐えた。
円地 文子 / 女坂 amazon
離れ小島におしやられたような孤独な思いが胸の中でとぐろを巻いた。
木山 捷平 / 大陸の細道 amazon
いつも寂しい砂地のような心の人
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
まるで宇宙の闇を見ているように孤独なのだ。
吉本 ばなな / 哀しい予感 amazon
三日ぶりに開いたのに着信もメールもゼロだった。@略@だるまさんがころんだで鬼になって、かなりもったいぶって、だ~る~まさ~んがこ~ろ~んだっ! とやったのに振り向いたらだれもいなかった、みたいな心境だ。
綿矢 りさ / 勝手にふるえてろ amazon
何ヵ月も何年も、僕はただ一人深いプールの底に座りつづけていた。温かい水と柔らかな光、そして沈黙。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
鼠(人名)にとっての時の流れは、まるでどこかでプツンと断ち切られてしまったように見える。@略@切り口をみつけることさえできない。死んだロープを手にしたまま彼は薄い秋の闇の中を彷徨った。草地を横切り、川を越え、幾つかの扉を押した。しかし死んだロープは彼を何処にも導かなかった。羽をもがれた冬の蠅のように、海を前にした河の流れのように鼠は無力であり、孤独であった。何処かで悪い風が吹き始め、それまで鼠をすっぽりと取り囲んでいた親密な空気を地球の裏側にまで吹きとばしてしまったようにも感じられる。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
秋はいつも嫌な季節だった。夏のあいだに休暇で街に帰っていた数少ない彼の友人たちは、九月の到来を待たずに短かい別れの言葉を残し、遠く離れた彼ら自身の場所に戻っていった。そして夏の光があたかも目に見えぬ分水嶺を越えるかのようにその色あいを微かに変える頃、鼠のまわりを僅かな期間ではあるがオーラの如く包んでいたある輝きも消えた。そして暖かい夢の名残りも、まるで細い川筋のように秋の砂地の底に跡かたもなく吸い込まれていった。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
僕にとってもそれは孤独な季節であった。家に帰って服を脱ぐ度に、体中の骨が皮膚を突き破って飛び出してくるような気がしたものだ。僕の中に存在する得体の知れぬ力が間違った方向に進みつづけ、それが僕をどこか別の世界に連れこんでいくようにも思えた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
その半年ばかりを僕は暗い穴の中で過ごしたような気がする。草原のまん中に僕のサイズに合った穴を掘り、そこにすっぽりと身を埋め、そして全ての音に耳を塞いだ。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
絃に背を向けられると月の裏側にいるみたいに冷える。
綿矢 りさ「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon
なんて傷つきやすい襞だろう みんな何をしているんだろう この孤独の海を どうやって泳いでいるんだろう 遊びすぎて炒めすぎて日々の油が焦げついてきた 倦怠は焦げついた油 慣れれば慣れるほど歪む 川の中で魚がいくら身をよじっても 川の流れる方向までは変えることはできない 本当はもう、どうでもいい。本当にもう、どうでもいい。 心のふちが乾いていく。ふちの薄い皮はめくれあがってきて、まんなかのジェル状のたまりだけが、まだなんとか透明な水色を保ってかさぶたとくっついているけれど、もう少ししたら真ん中の部分もすっかり乾いて、たまりがあったことさえ忘れてしまうのかもしれない。
綿矢 りさ「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon
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