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悲しみの比喩を使った文章の一覧(235件)
兎の眼のようなおじけづいた、心配そうな眼
小島信夫 / アメリカン・スクール amazon
眼の奥には追いつめられた動物のそれに似た必死な光りが籠っていた
石坂洋次郎 / 麦死なず amazon
花瓶を割った子供のように情けない顔
七尾与史 / 死亡フラグ立ちました! amazon
強い茎の花のようにぴんと上がっていた頭がだんだん垂れてくる
円地 文子 / 渦 amazon
胸の片隅に持ちこんできた、ものがなしく、どうにもやりきれないがらんがらんの風穴
高樹 のぶ子 / 光抱く友よ amazon
人里を遠く離れて荒野をひとりさまようという風な、自分をいたましく思う気持ちが胸にあふれる
石川 達三 / 花のない季節 amazon
狼の悪だくみにのった子羊のように哀れな存在
石坂 洋次郎 / 丘は花ざかり amazon
世の中のあらゆる不幸に見舞われたように舌が硬ばり、口をきくことができない
ジュール・ルナール / にんじん amazon
牛が胃袋からもどしたものを楽しみに噛みしめているように、昔の思い出をもどし、その懐かしさを噛みしめる
林 芙美子 / 晩菊・水仙・白鷺 amazon
鬱陶しさが、煙みたいに明るい部分を埋めてしまう
富岡 多恵子 / 砂に風 amazon
青い顔で、罪人のようにうなだれる
源氏 鶏太 / 家庭の事情 (1963年) amazon
怒涛のような悲泣の心が募る
檀 一雄 / リツ子・その愛 amazon
悲壮な感慨が、胸に潮のごとく湧きあふれる
海音寺 潮五郎 / 武道伝来記 amazon
おおいようもない終末感が暗い夕闇のように胸にしずみこむ
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
少女がうなだれて、鶏のようにびくびくする
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
希望なき零落の海から希望なき安心の島にと漂着する
国木田 独歩 / 武蔵野 amazon
死にかかった希望を胸のなかに抱く
佐藤 春夫 / 怪奇探偵小説名作選〈4〉佐藤春夫集―夢を築く人々 amazon
混迷と悲哀とが、足許に底知れぬ大きな口を開ける
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
萎れた花のように首を垂れる
大仏 次郎 / 冬の紳士 amazon
巨大な鯨に吞まれ、その腹の中で生き延びた聖書中の人物のように、つくるは死の胃袋に落ち、暗く淀んだ空洞の中で日付を持たぬ日々を送ったのだ
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
死の入り口に生きていた。底なしの暗い穴の縁にささやかな居場所をこしらえ、そこで一人きりの生活を送った。寝返りを打ったら、そのまま虚無の深淵に転落してしまいそうなぎりぎりの危うい場所だ。しかし彼はまったく恐怖を感じなかった。落ちるというのはなんと容易いことか、そう思っただけだ。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
木の枝に張りついた虫の抜け殻のように、少し強い風が吹いたらどこかに永遠に飛ばされてしまいそうな状態で、辛うじてこの世界にしがみついて生きてきた
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
その頃は、ただじっと深く自分の内奥を見つめていれば、心臓はやがて自然に停止してしまいそうに思えたものだ。精神を鋭く集中し、一ゕ所にしっかり焦点を結んでいれば、レンズが陽光を集めて紙を発火させるのと同じように、心臓に致命傷を与えられるに違いないと。彼はそうなることを心から期待していた。しかし彼の意に反して、何ゕ月経っても心臓は停まらなかった。それほど簡単に心臓は停まらないものなのだ。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
もう何年も忘れていた絶望という感情が両手を広げて僕に近づいてきた。
又吉 直樹 / 火花 amazon
知らぬうちに零した溜め息が足元に積もっているように感じ、足が抜けなくなるのではと不安を覚える。
伊坂 幸太郎 / アイネクライネナハトムジーク amazon
男が肩を落とす。ありとあらゆる希望が滑って落ちていくような、なで肩だ。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
鳥井の今の心の内は、からからに干からびた砂漠そのものだ、と思った。果てがなく、精神が乾燥し、方向感覚を失っている。@略@これからどう歩き出せばいいのか、途方に暮れている。
伊坂 幸太郎 / 砂漠 amazon
「死んだ妻のことを考えると、暗い深い穴に落ちていく感覚に襲われます。もしくは、妻は今でも、広大な砂漠に取り残されているのではないか、ってそんな気分になるんです。彼女は暗黒の砂漠の中で、声も出なければ音も聞こえず、何も見えなくて、不安を覚えながら、永遠に漂い続けていて、その孤独を、僕は救ってあげることができない。彼女を見つけることもできず、うっかりすると、彼女のことを忘れていることだってある。暗黒の、広漠な土地に放置された、巨大な心細さと悲しみしかありません」
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
まるでガラス壜(びん)に入れられた蠅のように虚無という不可能に突き当りながら、とび廻っていたのだ。
椎名 麟三 / 永遠なる序章 amazon
深夜の便器のような長嘆息
開高 健 / 飽満の種子「珠玉・花終る闇 (開高健全集)」に収録 amazon
涯しない海に面したような絶望感
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
怒濤のようななげきにおそわれて
丹羽 文雄 / 顔 (1963年) amazon
泣き続けて熱の塊のようになっているその紅い顔
竹西 寛子 / 兵隊宿 amazon
せっかく涌いた希望も泡のようにたわいもなくはじけてしまった。
和田伝 / 沃土「和田伝全集 第2巻」に収録 amazon
全く思い設けなかった悲しみが、津波のように私の胸を襲って来た。
里見 トン / 桐畑 amazon
風が利用できなくなった帆船のような失望
岡本 かの子 / 岡本かの子全集 amazon
葬式のかえりのように、さびしくて悲しかった。
獅子 文六 / 胡椒息子 (1953年) amazon
風琴がなくなった時の事を考えると、私は胸に塩が埋ったようで悲しかった。
林 芙美子 / 風琴と魚の町 amazon
踏張って見ても、泥沼に落込んだように足掻きがとれず、気持は下へ下へ沈むばかりだった。
志賀 直哉 / 暗夜行路 amazon
子供の時地中に埋めて久しく忘れ去っていた銀貨を、ふと思い出して掘りあてだようにうれしかった。
森田 たま / もめん随筆〈続〉 amazon
彼の体の内を風が吹き抜けるように、空虚さが通った。
石原 慎太郎 / 行為と死 (1967年) amazon
もうもがいても匐(は)い上ることの出来ぬ谷に落ちた気がした。
正宗白鳥(忠夫) / 何処へ amazon
みぞおちのなかに酢のたまるような悲しさに苦しめられて
林 芙美子 / 女性神髄「林芙美子全集〈第6巻〉女性神髄・女の日記 (1952年)」に収録 amazon
着なれた着物に手を通したような懐しさ
倉橋 由美子 / 長い夢路「倉橋由美子全作品〈6〉 ヴァージニア・長い夢路 (1976年)」に収録 amazon
硝子の中で磔(はりつけ)になっている卦算(けさん)の花ビラのように可哀そうに思われて来たのです。
井上 靖 / 猟銃「猟銃・闘牛 (新潮文庫)」に収録 amazon
絶望が、心の中にぎざぎざと鋸(のこぎり)のような歯を立てる。
平林 たい子 / 施療室にて「こういう女・施療室にて (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
考える力を喪失した、いわば動物園の檻のけもののようであった。
梅崎 春生 / 桜島 amazon
見送るウメは、まるで胸の中のもの全部をこそげとられて了(しま)ったような、絶望的な、うつろな気持だった。
妻たち(網野菊)「現代日本文学全集〈第39〉平林たい子,佐多稲子,網野菊,壷井栄集 (1955年)」に収録 amazon
思い出してさらさら肩をすべる粉雪の音色をきいているようにその頃がなつかしい。
森田 たま / もめん随筆 amazon
駱駝に乗って、広い沙漠を行くような、頼りない空虚な思い
林 芙美子 / 松葉牡丹「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
今殺されようとしている美しい獣のようにあわれ
円地 文子 / 女坂 amazon
草葉が霜にしおれるように、がくりと首をたれた。
森 鴎外 / 護持院原の敵討 amazon
全体が持っている悲しい心が、通って行く雲の影のように彼の胸を閉ざして行った。
大仏 次郎 / 宗方姉妹 (1954年) amazon
仄暗い虚無感が、鏡の上の曇りのように僕の意識に影を落した。
福永 武彦 / 草の花 amazon
春というのに旱りの雨蛙のようになっている自分は余り惨めではないか
岡本 かの子 / やがて五月に (1956年) amazon
満喜江と寝ている事に何の感動もなかった。@略@汽車の時間を待ち合わせているような空虚な時間が過ぎて行くだけだ。
林 芙美子 / 牛肉「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
男女の交合のあとのような悲しみ
三島 由紀夫 / 仮面の告白 amazon
褌(ふんどし)のようにバカ長い嘆息を洩らさざるを得なかった。
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
私は自分の胸が空洞になり、そこをこがらしが吹きぬけるような、云いようのないかなしさに浸された。
山本 周五郎 / 青べか物語 amazon
絶望的なものが満ち潮のように押しよせてきた
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
無限の薄闇に堕ちるような虚無
芝木 好子 / 隅田川暮色 amazon
急に雨戸を繰って雪景色に驚いたようなそんな空虚さ
林 芙美子 / 耳輪のついた馬「風琴と魚の町/清貧の書 (新潮文庫 は 1-4)」に収録 amazon
自分のひそかな絶望の形態が、竹矢来のように、自分の周囲に張りめぐらされた気がした。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
地底に吸いこまれて行くような絶望感
田宮 虎彦 / 荒海 amazon
悲しい思いが、風のある日の蘆屋(あしや)の海の白い波頭のように四方から押し寄せて
井上 靖 / 猟銃「猟銃・闘牛 (新潮文庫)」に収録 amazon
深淵のようにふかい哀しみ
丹羽 文雄 / 顔 (1963年) amazon
雨漏りをみつけた時のような侘しさ
林 芙美子 / めし amazon
壊れた玩具のようにいたいたしい様子だった。
宇野 千代 / 色ざんげ amazon
明日から世界が消えてなくなりでもするような、悲痛な顔で駆けまわる。
森田 たま / もめん随筆〈続〉 amazon
夕立ちの前ぶれの空のように、今にも泣きだしそうな顔
阿木 燿子 / まぁーるく生きて amazon
罪人のように深く頭を垂れながら
加能 作次郎 / 世の中へ amazon
それが医者が僕に告げた診断だった。余命は長くて半年、ともすれば一週間すら怪しいという。放射線治療、抗ガン剤治療、終末期医療、さまざまな選択肢を医者が提示する。けれども、まったく耳に入らない。 小さい頃、夏休みはプールに通っていた。青く冷たいプールに飛び込む。ざばん。ぶくぶく。体が沈む。 「ちゃんと準備運動しなさい」 母さんの声がする。だが水の中でその声は、くぐもってよく聞こえない。すっかり忘れていた「音の記憶」がよみがえってくる。
川村 元気 / 世界から猫が消えたなら amazon
まるで雲の上にいるかのように、現実感がない一日を僕らは過ごした。
川村 元気 / 世界から猫が消えたなら amazon
日比野は優しかった。犬が飼い主の気分を察知するのと、似ている。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
濡れ雑巾のような泣き笑いの顔
池井戸 潤「民王 (文春文庫)」に収録 amazon
ずっと消えることなく心に掛かっていた鬱屈の霧
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
他人事のように担任の言葉を聞き流していた。窓もドアも閉めきった小さな真四角の部屋に閉じこめられるような話だ。耳が受けつけない。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
同情されるのって、真冬に飲む温かなココアみたいに、ほっとする心地よさがある。言い方にもよるけど、「だいじょうぶ?」と心配されると、気分がほこほこするときもある。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー〈2〉 (文春文庫)」に収録 amazon
小刻みに震えながら僕を眺めていた。まるで救命ボートの上から沈んで行く船を眺めるような目つきだった。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
たまらないほどの虚脱感が彼を襲った。辛うじて身をひとつに寄せ合っていた様々な意識の流れが、突然それぞれの方向に歩み始めたようでもある。何処まで行けばそれらの流れがまたひとつに巡り合えるものか鼠(人名)にはわからない。いずれは茫漠とした海に流れこむしかない暗い川の流れだ。二度と巡り合うこともないのかもしれない。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
身体を冷たい瓶のなかに塩漬けにされたような悲しい気持ち
綿矢 りさ「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon
間違いなく微笑みでありながら、彼の印象的な眼差しのせいで、桜の花びらのようにもろく繊細な表情に見えた。
小川 洋子 / 夕暮れの給食室と雨のプール「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
未来が途方もなく厚い重い灰色の壁のようにしか感じられない
山川方夫 / 山川方夫全集〈4〉一人ぼっちのプレゼント amazon
その他の感情を表す比喩表現
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