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絶望が、心の中にぎざぎざと鋸(のこぎり)のような歯を立てる。
平林 たい子 / 施療室にて「こういう女・施療室にて (講談社文芸文庫)」に収録 作品を確認(amazon)
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絶望・希望がない
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単語の意味
刻刻・刻々・段段・段々(ぎざぎざ)
刻刻・刻々・段段・段々・・・のこぎりの歯のような細かい刻み目。また、その目が続いているさま。
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頭は真っ白で、目の前が真っ暗で。
吉本 ばなな / 満月 キッチン2「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon関連カテ絶望・希望がない頭の中が真っ白・茫然自失
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風が利用できなくなった帆船のような失望
岡本 かの子 / 岡本かの子全集 amazon
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高まっていた期待が、すっと萎んでいく
池井戸潤「下町ロケット (小学館文庫)」に収録 amazon
君の心は妙にしんと底冷えがしたようにとげとげしく澄み切って、君の目に映る外界の姿は突然全く表情を失ってしまって、固い、冷たい、無慈悲な物の積み重なりに過ぎなかった。無際限なただ一つの荒廃――その中に君だけが呼吸を続けている、それがたまらぬほどさびしく恐ろしい事に思いなされる荒廃が君の上下四方に広がっている。波の音も星のまたたきも、夢の中の出来事のように、君の知覚の遠い遠い末梢まっしょうに、感ぜられるともなく感ぜられるばかりだった。すべての現象がてんでんばらばらに互いの連絡なく散らばってしまった。その中で君の心だけが張りつめて死のほうへとじりじり深まって行こうとした。重錘おもりをかけて深い井戸に投げ込まれた灯明のように、深みに行くほど、君の心は光を増しながら、感じを強めながら、最後には死というその冷たい水の表面に消えてしまおうとしているのだ。  君の頭がしびれて行くのか、世界がしびれて行くのか、ほんとうにわからなかった。恐ろしい境界に臨んでいるのだと幾度も自分をいましめながら、君は平気な気持ちでとてつもないのんきな事を考えたりしていた。そして君は夜のふけて行くのも、寒さの募るのも忘れてしまって、そろそろと山鼻のほうへ歩いて行った。
有島武郎 / 生まれいずる悩み
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