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倉地と葉子とは互い互いを楽しませそしてひき寄せるためにあらん限りの手段を試みた。葉子は自分の不可犯性（女が男に対して持ついちばん強大な蠱惑（こわく）物）のすべてまで惜しみなく投げ出して、自分を倉地の目に娼婦（しょうふ）以下のものに見せるとも悔いようとはしなくなった。二人（ふたり）は、はた目には酸鼻（さんび）だとさえ思わせるような肉欲の腐敗の末遠く、互いに淫楽（いんらく）の実（み）を互い互いから奪い合いながらずるずると壊（こわ）れこんで行く

有島武郎 / 或る女（後編）　ページ位置：42%　作品を確認（青空文庫）

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セックス愛撫（前戯）セックスに至るまで

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前後の文章を含んだ引用

......う欲念、そしてそれができそうな期待が葉子を未練にした。それからというもの葉子は忘我渾沌（ぼうがこんとん）の歓喜に浸るためには、すべてを犠牲としても惜しまない心になっていた。そして倉地と葉子とは互い互いを楽しませそしてひき寄せるためにあらん限りの手段を試みた。葉子は自分の不可犯性（女が男に対して持ついちばん強大な蠱惑（こわく）物）のすべてまで惜しみなく投げ出して、自分を倉地の目に娼婦（しょうふ）以下のものに見せるとも悔いようとはしなくなった。二人（ふたり）は、はた目には酸鼻（さんび）だとさえ思わせるような肉欲の腐敗の末遠く、互いに淫楽（いんらく）の実（み）を互い互いから奪い合いながらずるずると壊（こわ）れこんで行くのだった。　しかし倉地は知らず、葉子に取ってはこのいまわしい腐敗の中にも一縷（いちる）の期待が潜んでいた。一度ぎゅっとつかみ得たらもう動かないある物がその中に横たわってい......

単語の意味

蠱惑（こわく）

蠱惑・・・神秘的な魅力で人の心をひきつけて、惑わすこと。

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