(壊れかかった街)雨や風が蝕 んでやがて土に帰ってしまう、と言ったような趣きのある街で、土塀 が崩れていたり家並が傾きかかっていたり――勢いのいいのは植物だけで、時とするとびっくりさせるような向日葵 があったりカンナが咲いていたりする。
梶井基次郎 / 檸檬 ページ位置:9% 作品を確認(青空文庫)
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町並み・集落
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前後の文章を含んだ引用
......にしてもよそよそしい表通りよりもどこか親しみのある、汚い洗濯物が干してあったりがらくたが転がしてあったりむさくるしい部屋が覗 いていたりする裏通りが好きであった。雨や風が蝕 んでやがて土に帰ってしまう、と言ったような趣きのある街で、土塀 が崩れていたり家並が傾きかかっていたり――勢いのいいのは植物だけで、時とするとびっくりさせるような向日葵 があったりカンナが咲いていたりする。 時どき私はそんな路を歩きながら、ふと、そこが京都ではなくて京都から何百里も離れた仙台とか長崎とか――そのような市へ今自分が来ているのだ――という錯覚を起こそう......
単語の意味
趣(おもむき)
趣・・・しっとりと落ち着いて、心惹かれる特徴や雰囲気。そのものがもっている、自然とかもし出される(いい)雰囲気。ずいぶん昔のものなのに、手入れがされているさま。風情(ふぜい)。
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町並み・集落の表現・描写・類語(地上・陸地のカテゴリ)の一覧 ランダム5
暗い谷間の樹木のように、黒くおたがいに閉ざしあって群がっている小さな集落
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
国道四号をひたすらに北上し、岩手県に入り、さらに進んだところに古い住宅街がある。好景気の際に地元の開発業者が意気込み、造成した場所だ。年が経つに連れ、景気の悪化は加速し、若い住人は都心部に流れ、人口は減り、当初、未来図に描かれていた数々の施設や建物は永遠に絵のままとなり、新しい住宅が建つことも皆無で、殺風景な町と化した。並ぶ建物の壁は色褪せ、成長途中のまま老年期に突入したようなものだったが、
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
斜面に鳥の群れのようにとまっている家々
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
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(山が)ドッシリ腰を下したといった感じでそびえている。
深田 久弥 / 四季の山登り (1963年) amazon
何といっても浅間の美しさは限りなかった。美しいというよりは、いっそなまめかしい。怠惰な裸女の寝姿のようだった。
坂口安吾 / 佐久の夕映「日本の文学〈第63〉坂口安吾,織田作之助,檀一雄 (1969年) 白痴・道鏡・堕落論・他6篇 夫婦善哉・放浪・世相・他5篇 花筐・佐久の夕映・誕生・他3篇」に収録 amazon
黒ぐろと樹木をコンモリ茂らせたその島は、まるで童話の絵本でも見るような、ある典型的な眺め
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
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