綺麗に整頓されているというよりも、単に荷物がないだけに見えた。

まるで大きなさいころみたいな、飾りのない真四角な部屋だった。

あんまり仕切りのない家で、きょうだい五人、ざこ寝をしてた。

こたつで猫と一緒にせんべいをかじっている女

狭い部屋を機能的に使おうとする工夫があちこちで見られる。布団はきれいに畳まれ、部屋の隅に重ねてあった。ベッドを置くスペースはなく、かといって布団を収納できるだけの押し入れもない。机の代わりに、冬はこたつになる座卓が置かれて、《…略…》（壁の一部を埋める本棚の）一部分にデッキ一体型のテレビがすっぽり収まっていた。他の家電製品も、すべて部屋の狭さを考慮した上で購入したのだろう。あるべきところに収まるといった格好で、備え付けの家具のように見事に配置されている。

ドアを開ける度、ぞっとした。住まなくなってからのここは、まるで別人の顔をするようになった。 　しんと暗く、なにも息づいていない。見慣れていたはずのすべてのものが、まるでそっぽを向いているではないですか。私は、ただいまと言うよりはおじゃましますと告げて抜き足で入りたくなる。 　祖母が死んで、この家の時間も死んだ。 　私はリアルにそう感じた。

窓のカーテンは長年の日差しを受けて黄色く変色している。

（図書館の高い天井）本の背表紙とその窓を交互に見ていると、めまいがしそうなくらいに高い天井だった。床を叩くヒールの細い音が、一直線に上へ伸びていった。

住み心地（ごこち）のいい巣を造る

お見舞いの桃