煤けて背骨のない藁人形のようなお婆さん

髪も薄く白く、 土気色 の肌に、はっきり刻まれた皺

中年に近づくにつれて元気のない影のような人間になっていく

こだわりのない二人のお婆さんを見ていると、こんなところにもこんな世界があるのかと、淋しくなった。

とにかく目立たないこと優先で選んだようなくすんだ色の重い綿素材の長袖や半袖を何枚も着ている。同素材の重ね着という非効率的なコーディネートでは、重くて肩も凝るだろう。母がウールやダウン素材の服を買い与えても全然着ようとしない祖父には、空気の層で保温する科学的思考が欠如している。

老人は、子供のころよく見た腹話術の人形みたいな顔をしていた。話すときの、口元の動きに特徴があった。

顔が梅干しそっくりな、梅干ばあさん

（銭湯の）番台ではしおれたじいさんが、つまらなそうに小型テレビを観ている。番台の横に置いてあるアサガオまで、じいさんの真似をしてしおれている。

その女性に背中を支えられるようにして、高齢の女性がゆっくりと姿を現した。

田辺弁護士は、六十歳という年齢のせいかいかにも弱々しく、みすぼらしく見える。被告側の席に置いたよれよれのカバンも一層、その印象を濃くしていた。