銀座へ出かけて行った。そこでは華ばなしいクリスマスや歳末の売出しがはじまっていた。 友達か恋人か家族か、舗道の人はそのほとんどが連れを携えていた。連れのない人間の顔は友達に出会う当てを持っていた。そしてほんとうに連れがなくとも金と健康を持っている人に、この物欲の市場が悪い顔をするはずのものではないのであった。
梶井基次郎 / 冬の日 ページ位置:50% 作品を確認(青空文庫)
この表現が分類されたカテゴリ
歓楽街・盛り場
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......は街路から、風が枯葉を掃ってしまったあとは風の音も変わっていった。夜になると街のアスファルトは鉛筆で光らせたように凍 てはじめた。そんな夜を堯 は自分の静かな町から銀座へ出かけて行った。そこでは華ばなしいクリスマスや歳末の売出しがはじまっていた。 友達か恋人か家族か、舗道の人はそのほとんどが連れを携えていた。連れのない人間の顔は友達に出会う当てを持っていた。そしてほんとうに連れがなくとも金と健康を持っている人に、この物欲の市場が悪い顔をするはずのものではないのであった。 「何をしに自分は銀座へ来るのだろう」 堯は舗道が早くも疲労ばかりしか与えなくなりはじめるとよくそう思った。堯はそんなときいつか電車のなかで見たある少女の顔を思い......
単語の意味
歳末(さいまつ)
歳末・・・年の暮れ。年末。歳晩(さいばん)。
ここに意味を表示
歓楽街・盛り場の表現・描写・類語(店・施設のカテゴリ)の一覧 ランダム5
うず巻く強力なネオンの町
吉本 ばなな「アムリタ(上) (新潮文庫)」に収録 amazon
映画館の看板や百貨店の垂れ幕が色鮮やかな繁華街の中でひときわはなやいで映っていた。
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
花見帰りの金魚のようなお嬢さんや、紳士達が、夜の駅にあふれて、あっちにもこっちにも藻 のようにただよい仲々賑 かだ。
林芙美子 / 新版 放浪記
このカテゴリを全部見る
「店・施設」カテゴリからランダム5
聴診器やピンセットや血圧計が無造作に置いてあった。その細くくねった管や、鈍い銀色の光や、洋梨型のゴム袋は、なまめかしい昆虫のようだった。カルテに書き込まれたアルファベットの続け文字には、ぞくぞくする秘密めいた美しさがあった。
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
ラジウムの 含有量 で世界第二位というここの湯が気に入っていた。いかにも厚味のあるトロリとした 肌 ざわり、そして出てからいつまでもぽかぽか温まっている
志賀 直哉 / プラトニック・ラヴ「城の崎にて・小僧の神様 (角川文庫)」に収録 amazon
同じカテゴリの表現一覧
店・施設 の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ