ミュウはグラスの中でワインをくるりと小さく回転させた。

ワインの渋さに口をゆがめる

白ワインを口に含み、せせらぎのようなかすかな音を立てながら味と香りをみた。空気と一緒に舌の上で転がすようにして、しっかりと味わって、それから鼻腔に残った香りで料理を食べればいい。

フランスのブルゴーニュ産のぶどう酒はコクがあるのに対して、ボルドー産のは淡泊で腰がある

少し荒いがコクがあってとてもいい

ミュウはワイン・グラスの脚を指のあいだにはさみ、機械のネジを巻くみたいに軽くまわしていた。

葡萄のビールを出して飲んだ。甘酸っぱい液体は、体の隅々まで行き渡り、彼は、ようやく安らいだ。

ワインのグラスを手にとり、口もとに運んだ。光線の加減で、彼女の瞳が一瞬ワインの深い葡萄色に染まったように見えた。

新しいグラスに注いだ赤ワインを宙にかざして注意深く眺め、香りを確かめ、それから静かに最初のひとくちを口に含んだ。一連の動作は、内省的なピアニストが歳月をかけて磨き上げた短めのカデンツァを思わせる、自動的な優雅さをもっておこなわれた。

ワインを注意深く口にふくみ、それから喉の奥に送りこんだ。しばらくは口の中に心地良い風味が残ったが、数秒待つとそれも、まるで夏の葉の朝露が蒸発するときのように、あとも残さず消えていった。そのようにして舌が、次の料理のひとくちを味わう準備を整えるのだ。

新しいグラスに注いだ赤ワインを宙にかざして注意深く眺め、香りを確かめ、それから静かに最初のひとくちを口に含んだ。一連の動作は、内省的なピアニストが歳月をかけて磨き上げた短めのカデンツァを思わせる、自動的な優雅さをもっておこなわれた。

盃をあげて、ちょっと中の模様を見て、ぐびりと飲む

おが屑のような匂いがする

（一口飲むと、）胃のあたりにほんのりとあたたかな感じがしている。　おれは二杯目に口をつけた。ひしゃくの半分くらいまでを味わって飲んでいると、今度はたしかに胃の全体に陽がさしているような熱感を覚えた。まちがいない、これは酒だ。しかし、通常の酒のように、舌を刺すようなアルコールのとげや、臭さがまったくない。酒飲みのおれでさえそれと気づかないほど、これはさわやかで軽い飲み口を持っていた。 それに酔いの最初のキックも、ウィスキーやウォッカのように、胃がカッと灼ける感じではなく、胃の中に小さな小さな太陽が生まれて、そこから体の内部をあたたかく照らしているような、そんな酔いなのだ。

しそサワーはピンクの飲物で、意外にも塩っぽくて梅酢を炭酸で割ったような味だった