会社全体に怠惰な空気が漂いはじめている。

大部屋の空気の変化に気づいていた。熱気が薄れた。奇妙なほど落ちつき払っている。喧騒は相変わらずだが、殺気立ったところがない。昨日まで部屋中を包んでいた、ヒリヒリとするような乾いた空気が、微かだが湿りけを含んでいるようにも感じられる。《…略…》犠牲者の遺書に流した局員の涙が、熱に浮かされていた大部屋の空気に湿りけと落ちつきをもたらした。

班内は全く陰うつで残忍な洞窟のようなところとなった。

三人の間には更に緊張した深い静けさが流れた。

それからみんな黙ってしまって、誰も手巻き寿司を食べなかった。たくさんのすし飯は乾燥してつやがなくなり、お刺身も色がくすみ始めていた。

山も空も氷を透すように澄み切る

空間が肌になじんで、居心地がいい。

（会話を）なにか無理矢理中断したような、おさまりの悪い空気が残った。

（気配がない）暗殺者のような身のこなし

（隣室の音に）耳をそばだてた。柔く床に倒れるサユリの肌やそれを押さえつけるスタンの骨のきしみの気配を、扉を一枚隔てた場所で、驚くほど正確に彼は感じ取った。