漂白されたような老僧

祖母が沼から這い上がるようにしてゆっくりこちらに向かって（階段を）登ってくる。薄暗い階段を、ノソノソと腰の曲った白髪の老婆が登ってくる様は悪夢のようであった。祖母は階段を登り終えると、彼に向かって「このたびは遠い所からようこそおいで下さいました。孫をよろしくお願い致します」と言い残し、登ってくる時と同じ姿勢のまま、ノソノソと階段を降りていった。”沼に住む亀が、老婆に姿を化えて人間界にお告げにやってきた”というような、奇怪なムードにあたり一面包まれ、そのまま時は過ぎた。

繁ばあちゃんも言った。小声のつもりなんだろうけど、耳が遠いから音量が絞りきれてない。

田辺弁護士は、六十歳という年齢のせいかいかにも弱々しく、みすぼらしく見える。被告側の席に置いたよれよれのカバンも一層、その印象を濃くしていた。

小さな猿のような年寄り

老人たちは、亡霊のように痩せ衰えていた。

（銭湯の）番台ではしおれたじいさんが、つまらなそうに小型テレビを観ている。番台の横に置いてあるアサガオまで、じいさんの真似をしてしおれている。

入り口近くのベッドの上に座っていた老人が答える。しわだらけの顔、ぽちっとした黒目がちの目、禿げあがった額の具合、背をまるめてちょこんと座っている風情。どこをとってもオランウータンにそっくりだ。いまにもグルーミングを始めそうな、どことなく可愛い感じのする爺さんだ。

萎れた植物を連想させる

白い染みがつき、カサカサに皺のよったその皮膚