梢からは白い水蒸気のようなものが立ち騰 る。霜が溶けるのだろうか。溶けた霜が蒸発するのだろうか。いや、それも昆虫である。微粒子のような羽虫がそんなふうに群がっている。そこへ日が当ったのである。
梶井基次郎 / 冬の蠅 ページ位置:5% 作品を確認(青空文庫)
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羽虫
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......して自分らの身体を溪のこちら岸からあちら岸へ運ぶものらしい。)昆虫。昆虫。初冬といっても彼らの活動は空に織るようである。日光が樫 の梢に染まりはじめる。するとその梢からは白い水蒸気のようなものが立ち騰 る。霜が溶けるのだろうか。溶けた霜が蒸発するのだろうか。いや、それも昆虫である。微粒子のような羽虫がそんなふうに群がっている。そこへ日が当ったのである。 私は開け放った窓のなかで半裸体の身体を晒 しながら、そうした内湾 のように賑やかな溪の空を眺めている。すると彼らがやって来るのである。彼らのやって来るのは私の部屋......
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どこからともなく蜜蜂の羽音が聞こえてくる。先生の部屋で聞いた羽音の名残りなのか、ただの耳鳴りなのか区別がつかない。しかしそれはどんなにか細く微かでも、それることなく真直ぐ鼓膜を突き抜けてゆく。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
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電球が鳴きだしたかと思われるような、すがれた蟋蟀(こおろぎ)の声
里見 トン / 極楽とんぼ―他一篇 amazon
赤蜻蛉の羽がまるで銀の雨の降るように見えたんです。
泉 鏡花 / 縷紅新草 amazon
一匹の 蠅 が、額を流れてくる汗を 舐めようとして、しつこく顔のまわりに飛んできた。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
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