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......ゴルフ練習場の緑色のネットや、セメント色の平坦な自動車教習所を通り過ぎた頃、大きく左手に曲がった川に抱きかかえられるようにして建っている『新天地』が見えてきた。それは、円柱形の塔を中心にして左右対称に翼を広げた形の、大きな建物だった。その明瞭な輪郭は網膜にはりつき、いくら走っても近づいてこないような錯覚を呼び起こした。わたしは、誰の目にも確かに美しく映っていながら、決して近寄ることのできない幻の城があったという童話を思い出した。『新天地』が幻ならば余計に、さえの肉体を手放す場所としてふさわしいように思えた。　翼の内側に広がる前庭のスロープをゆっくり上ってゆくと、白衣を着た何人かの職員が......