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離れは質素を通り越して見すぼらしかった。素っ気ないコンパクトな平屋造りで、止むを得ず渋々そこに建っているかのような気配を漂わせていた。その気配を覆い隠すためか、離れの周囲だけ、手入れをされていない樹木が伸び放題に茂っていた。玄関は日当たりが悪く、呼び鈴は壊れて鳴らなかった。
小川洋子「博士の愛した数式 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:3% 作品を確認(amazon)
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粗末な建物
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前後の文章を含んだ引用
......、月曜日からで、異存はございませんね」 余計な詮索を差し挟む余裕を与えまいとするように、彼女は言い切った。こうして私は博士の家政婦になった。 立派な母屋に比べ、離れは質素を通り越して見すぼらしかった。素っ気ないコンパクトな平屋造りで、止むを得ず渋々そこに建っているかのような気配を漂わせていた。その気配を覆い隠すためか、離れの周囲だけ、手入れをされていない樹木が伸び放題に茂っていた。玄関は日当たりが悪く、呼び鈴は壊れて鳴らなかった。「君の靴のサイズはいくつかね」 新しい家政婦だと告げた私に博士が一番に尋ねたのは、名前ではなく靴のサイズだった。一言の挨拶も、お辞儀もなかった。どんな場合であれ......
単語の意味
質素(しっそ)
日当たり(ひあたり)
質素・・・生活ぶりが贅沢でなく控えめなこと。無駄を省かれていて飾り気がないこと。
日当たり・・・日の光が当たること。また、その当たり具合。
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