えり子さんの死を告げられて以来、ずっと私が彼に感じているこの心細さは“〝電話”〟に似ている。あれ以来の雄一はたとえ目の前にいても電話の向こうの世界にいるように感じられた。そしてそこは、私の今生きている場所よりもかなり青い、海の底のようなところだという気がした。
吉本 ばなな / 満月 キッチン2「キッチン (角川文庫)」に収録 ページ位置:74% 作品を確認(amazon)
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心細い
孤独・一人ぼっち
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前後の文章を含んだ引用
...... 私は手を伸ばして受話器を取り、ごく自然な気持ちでメモを出して雄一の宿に電話をかけてみた。 宿の女の人が電話を切り替えて雄一を呼んでいる間に、私はふと思った。 えり子さんの死を告げられて以来、ずっと私が彼に感じているこの心細さは“〝電話”〟に似ている。あれ以来の雄一はたとえ目の前にいても電話の向こうの世界にいるように感じられた。そしてそこは、私の今生きている場所よりもかなり青い、海の底のようなところだという気がした。「もしもし?」 雄一が電話に出てきた。「雄一?」 私はほっとして言った。「みかげかー? どうしてここがわかったんだい? ああ、そうか、ちかちゃんか。」 少し遠く......
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死にかけている老いぼれ犬の眼のような、絶望的な孤独感
安部 公房 / 他人の顔 amazon
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「心」の言葉を含む恐怖の表現・描写・類語(寂しい・喪失感のカテゴリ)の一覧 ランダム5
心の中が冷えるように覚えた。
宮本百合子 / 伸子
胸の中の躍る心臓の形が胸壁にぶつかった。
野間 宏 / 顔の中の赤い月「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
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寂しさを心で感じるの表現・描写・類語(寂しい・喪失感のカテゴリ)の一覧 ランダム5
医師が来るまで小一時間病人と二人ぎりで、伸子は名状し難い孤立感を覚えた。この大都会の生活と自分達の生存とはいざとなると何と無関係なことか。周囲の冷然とした感じが伸子の心にこたえた。
宮本百合子 / 伸子
(仲よしグループから当然の絶縁を宣告され、思い当たることがない心境)どう言えばいいんだろう、まるで航行している船のデッキから夜の海に、突然一人で放り出されたような気分だった《…略…》誰かに突き落とされたのか、それとも自分で勝手に落ちたのか、そのへんの事情はわからない。でもとにかく船は進み続け、僕は暗く冷たい水の中から、デッキの明かりがどんどん遠ざかっていくのを眺めている。船上の誰も船客も船員も、僕が海に落ちたことを知らない。まわりにはつかまるものもない。そのときの恐怖心を僕は今でも持ち続けている。自分の存在が出し抜けに否定され、身に覚えもないまま、一人で夜の海に放り出されることに対する怯えだよ。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
豊饒な空想に孤独な心を満たす
円地 文子 / 朱を奪うもの amazon
心のうちでごおんと鐘の鳴るような淋しい気持ち
林芙美子 / 新版 放浪記
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二人の放浪人が、こんな淋しいところに、落葉のように吹き寄せられている
林 芙美子 / 松葉牡丹「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
己れの肉感が暮色の中にとろけ果ててでも行くような、頼みがたい孤独
檀 一雄 / リツ子・その愛 amazon
青白い寂寥 が感じられた。
岡本かの子 / 巴里祭
僕にとってもそれは孤独な季節であった。家に帰って服を脱ぐ度に、体中の骨が皮膚を突き破って飛び出してくるような気がしたものだ。僕の中に存在する得体の知れぬ力が間違った方向に進みつづけ、それが僕をどこか別の世界に連れこんでいくようにも思えた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
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