(かつらをかぶせた白い壺)白い壺は、下ぶくれの若い女の子のようで、 かつら がよく似合う。《…略…》窓をあけると、十二月の夜の風が吹き込んで、壺にのっている栗色の髪をなぶるように揺すっている。陽気な生首のように見える。
向田邦子 / りんごの皮「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 ページ位置:84% 作品を確認(amazon)
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かつら・ウィッグ
花瓶・つぼ
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前後の文章を含んだ引用
......直さずには居られない性分である。直して居間へゆき、壺の枯れた花を捨て、中に百万円の札束をかくした。花の代りに、捧げ持ってきた明るい栗色のかつらをふわりとのせた。白い壺は、下ぶくれの若い女の子のようで、かつらがよく似合う。 白い果物鉢を出して、りんごをいれた。 壺も鉢も、時子としては身分不相応にいいものである。色も形も吟味して、苦労して手に入れたものばかりである。いや壺や鉢ばかり......<中略>......いは、その実りの匂いであろう。 垂れ下ったりんごの皮は、おもてが赤く、裏は青く白い。ふちにうす赤い紅が滲んでいる。時子は、むき終った長いうず巻きを口にいれた。 窓をあけると、十二月の夜の風が吹き込んで、壺にのっている栗色の髪をなぶるように揺すっている。陽気な生首のように見える。 時子は、りんごの皮を口からぶら下げ、窓の外に向って、りんごの実をほうり投げた。裸のりんごは、うす墨の闇の中で白い匂いの抛物線を描き、思ったより遠くに飛んで消え......
単語の意味
嬲る(なぶる)
下膨れ・下脹れ(しもぶくれ)
陽気(ようき)
嬲る・・・からかう。もてあそぶ。面白半分でする。
下膨れ・下脹れ・・・顔の下の方である、ほっぺから下が膨らんでいること。また、そのような顔。
陽気・・・1.天候。時候。
2.万物が動き、生まれ出ようとする気。陽の気。
2.万物が動き、生まれ出ようとする気。陽の気。
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かつら・ウィッグの表現・描写・類語(髪のカテゴリ)の一覧 ランダム5
(頭にかつら下用のネットをかぶって)黒い 蕪 のような格好になった時子の頭
向田邦子 / りんごの皮「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 amazon
かぶり馴れないせいか、眉を動かすとかつらは上へ上へとせり上ってくる。
向田邦子 / りんごの皮「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 amazon
光沢のあるその髪の毛のような物体は、人工的だ。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
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花瓶・つぼの表現・描写・類語(道具・家具のカテゴリ)の一覧 ランダム5
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一度虫が入ったらもう二度と出てこられないようなわっしゃわしゃのパーマ
朝井 リョウ / 燃えるスカートのあの子「もういちど生まれる (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
(髪を束ねてあげた少女)髪を上げた彼女を目にするのは初めてだったが、それは奇跡的なまでに親密で美しい光景だった。彼女のむき出しにされた耳と首筋は、ほかの女性のまるっきりの裸体を目の前にするのと同じくらい、彼の心を揺り動かし、深く戸惑わせた。まるでナイルの源流である秘密の泉を発見した探検家のように、天吾はしばし言葉を失い、目を細めてふかえりの姿を眺めていた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
波の音と、あざみさんの波打つ髪の毛があまりにも同じ感じを出していて、私は泣き出しそうになった。
よしもとばなな / まぼろしハワイ「まぼろしハワイ」に収録 amazon
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漁夫達はすっかり身支度をし、股 までのゴム靴をはいたまま
小林多喜二 / 蟹工船
さまざまな事件があった。浴室のペンキを塗り替えていた主婦が中毒死し、小学生が粗大ごみ置場の冷蔵庫に閉じ込められ、六十七歳の結婚詐欺師が逮捕され、笑い茸を食べたお婆さんが病院へ運ばれた。わたしの知らないところで、世界は複雑に動いているようだった。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
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