食堂を出て動坂 の講談社に行く。おんぼろぼろの板塀 のなかにひしめく人の群をみていると、妙にはいりそびれてしまう。講談社と云うところはのみの巣のようだと思う。文明も何もない。只、汚ないぼろぼろの長い板塀にかこまれている。
林芙美子 / 新版 放浪記 ページ位置:71% 作品を確認(青空文庫)
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古い建物の佇まい
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前後の文章を含んだ引用
......う、死んでしまいたいと思うくせに、誰かをだましてやろうと思っているくせに、私には何の力もない。袖口も、襟 もとも垢 でぴかぴか光っている。いっそ裸で歩きたい位だ。 食堂を出て動坂 の講談社に行く。おんぼろぼろの板塀 のなかにひしめく人の群をみていると、妙にはいりそびれてしまう。講談社と云うところはのみの巣のようだと思う。文明も何もない。只、汚ないぼろぼろの長い板塀にかこまれている。昨夜一晩で書きあげた鳥追い女と云う原稿が金に替るとは思われなくなってくる。浪六 さんのようなものを書くにはよほど縁の遠い話だ。 私はねえ、下宿料が払えないのよ。こ......
単語の意味
妙(みょう)
文明(ぶんめい)
妙・・・とてもいい。非常に優れている。または、不思議、奇妙なこと(さま)。
文明・・・漠然とした意味として、人間社会の発達、進化した段階。文字を持ち、交通網が発達して、農耕や牧畜によって生産したものを主な食料とし、またそれを貯蔵する余裕が生まれ、数多くの専門職に従事する人々が集まって形成する都市を中心にまとまった社会の状態。
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四階建ての雑居ビルは築四十年以上。ひび割れが目立つ煤けた煤けた外壁には触手のようなツタがびっしりとからみつき不気味な雰囲気を醸し出している。今日も入り口に猫の死骸が転がっていたが陰気な風景にオブジェのようになじんでいる。
七尾与史 / 死亡フラグが立ちました! amazon
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流れる霧の中で、別荘の建物が西洋の亡霊の家のように不気味
笹沢 左保 / 終りなき鬼気 amazon
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林芙美子 / 新版 放浪記
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