(落ち込む気持ちを意識的に切り替える)彼は段々自分が、そういう気分に 惹き込まれつつある事を意識した。坂路で惰性のままに段々早くなる、それを踏み 止るような心持で、寧ろ意志的に彼は気分を惹きもどそうとした。手段として、彼は広い広い世界を想い浮べた。地球、それから、星、( 生憎 曇っていて、星は見えなかったが)宇宙、そう想い広めて行って、更にその一元子程もない自身へ想い返す。すると今まで頭一杯に拡がっていた暗い 惨めな彼だけの世界が急に 芥子粒 程のものになる。
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:31% 作品を確認(amazon)
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気分転換・心機一転・リフレッシュ
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前後の文章を含んだ引用
......はそれが自身の罪を突きつけられる事だったに違いない。罪の子、自分は本統に罪の子なるが故に生れながらにして、そう出来ていたのではなかったか。こんなに考えられた。 彼は段々自分が、そういう気分に惹き込まれつつある事を意識した。坂路で惰性のままに段々早くなる、それを踏み止るような心持で、寧ろ意志的に彼は気分を惹きもどそうとした。手段として、彼は広い広い世界を想い浮べた。地球、それから、星、宇宙、そう想い広めて行って、更にその一元子程もない自身へ想い返す。すると今まで頭一杯に拡がっていた暗い惨めな彼だけの世界が急に芥子粒程のものになる。──これは彼のこういう場合の手段で、今も或る程度には成功した。 少し腹が空いて来た。彼は時々行く西洋料理屋まで引きかえそうかと思ったが、新地を又通って、行く事が......
単語の意味
意志的(いしてき)
坂路(はんろ)
意志的・・・その人の言動や雰囲気に意思の強さが感じられるさま。
坂路・・・1.さか道。
2.競馬において、坂を利用した調教コース。
2.競馬において、坂を利用した調教コース。
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気分転換・心機一転・リフレッシュの表現・描写・類語(その他の気分のカテゴリ)の一覧 ランダム5
水を両手で掬 って、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。
太宰治 / 走れメロス
気がつくと無力感が静かに音もなく、水のように部屋に満ちていた。僕はその無力感をかきわけるようにして浴室に行き、「レッド・クレイ」を口笛で吹きながらシャワーを浴び、台所に立って缶ビールを飲んだ。そして目を閉じてスペイン語で一から十まで数え、声を出して「おしまい」と言って、手をぱんと叩いた。それで無力感は風に吹き飛ばされるようにさっと消えた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
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たまらないほどの無力感に支配されていった。どんなにあがいてみたところで何処にも行けやしないんだ、と思う。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
舌に唾が湧いて来て
林芙美子 / 新版 放浪記
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