手術室は九階にあって、専用のエレベーターでしか降りられないようになっていた。エレベーターの扉が開いた瞬間、そこには病棟や研究棟とはどこか違った寒々しい雰囲気が広がっていた。まずエレベーターホールには何もない。ソファーも公衆電話もベンジャミンの鉢植もない。頼りないくらいにすっきりしている。そして暗い。ホールの隅は薄い闇にぼやけている。電灯の半分はスイッチを切られている。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 ページ位置:51% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
手術(室)
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......してきた不思議な印象深い色と、同じなんだ。── わたしは探し物を見つけたように、ほっとした。 わたしは一度だけボスに勧められて六年生たちと一緒にオペを見学した。手術室は九階にあって、専用のエレベーターでしか降りられないようになっていた。エレベーターの扉が開いた瞬間、そこには病棟や研究棟とはどこか違った寒々しい雰囲気が広がっていた。まずエレベーターホールには何もない。ソファーも公衆電話もベンジャミンの鉢植もない。頼りないくらいにすっきりしている。そして暗い。ホールの隅は薄い闇にぼやけている。電灯の半分はスイッチを切られている。わたしは学生たちに押されるようにして、そこを通り過ぎた。 手術室は思っていたよりもずっと素っ気ない小部屋で、壁も天井も床も機材も全部セメント色だ。ざわざわと立ち......
ここに意味を表示
手術(室)の表現・描写・類語(イベントのカテゴリ)の一覧 ランダム5
手術室は思っていたよりもずっと素っ気ない小部屋で、壁も天井も床も機材も全部セメント色だ。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
床には埃と手術中の血をたえず洗い落す水が軽い細かな音をたてて流れている。その水が、天井につるした大きな無影燈の光に反射して、手術室全体を燃えた白金の炎のように輝かせていた。その中で浅井助手も看護婦たちもまるで水の中の海草のようにゆらゆらと動いている。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
無影燈のまぶしい青白い光も、海草のようにゆっくり動いている白い手術着をきた人間たちの姿も
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「イベント」カテゴリからランダム5
この墓銘 を沢庵石 へ彫 り付けて本堂の裏手へ力石 のように抛 り出して置くんだね。
夏目漱石 / 吾輩は猫である
一度結婚をしてみて、おかげで人生に忘れ物をしたような気分にならなくてすむし、結婚がそれほどすばらしいものとも思わない。
阿刀田 高 / 狂暴なライオン「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon
「病院」カテゴリからランダム5
白い天井ばかりを見ている日々が数日続く
山田太一「飛ぶ夢をしばらく見ない」に収録 amazon
白い角砂糖のような病院の建物
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
同じカテゴリの表現一覧
イベント の表現の一覧
病院 の表現の一覧
暮らしの表現 大カテゴリ