手術室は思っていたよりもずっと素っ気ない小部屋で、壁も天井も床も機材も全部セメント色だ。

まっ白な手術衣を着た医員や看護婦に囲まれて、やはりまっ白な手術台は墓場のように葉子を待っていた。

（卵巣摘出）不透明な白いビニールの手袋をはめた手が、何本も何本もその肉体の上で交差する。内臓は赤く充血して、鮮やかで、きれいでさえある。そして奥の方から卵巣が引っ張り出される。重さを量るように、一人の医師がそれを掌にのせる。卵巣は、震えるように小さく揺れる。彼女がこれを抱え込んでいた時の痛みが、全部この中に詰まっているかのように、表面がピンと張り詰めて、緊張している。医師がメスの先を表面に突き立てると、一筋の裂け目が走る。

緇い俎板（まないた）のような簡単な手術台

（手術室の）スイッチを 捻ると、無影燈の青白い光が天井や四方の壁にまぶしく反射した。

小鳥が石つぶての雨のように襲いかかる

ヘブン出版はとんでもない負債を抱えることになり、社員たちは沈没船から逃げるように去っていった

いい感じで観光スポットが点在する都市

武内が梶間家を訪れたのは、僧侶の 枕経 と家族の夕食が済み、知人関係への連絡も一段落して、家の中に物憂げな空気が漂い始めた九時頃だった。

床には埃と手術中の血をたえず洗い落す水が軽い細かな音をたてて流れている。その水が、天井につるした大きな無影燈の光に反射して、手術室全体を燃えた白金の炎のように輝かせていた。その中で浅井助手も看護婦たちもまるで水の中の海草のようにゆらゆらと動いている。

（病室の）部屋の角には金庫のような冷蔵庫があった。

病院に到着した救急車のハッチが勢いよく開く。弾けるように救急車の外に転がり出る救急隊員。車内に残った救急隊員との連携により、手際よく担架が降ろされる。

聴診器やピンセットや血圧計が無造作に置いてあった。その細くくねった管や、鈍い銀色の光や、洋梨型のゴム袋は、なまめかしい昆虫のようだった。カルテに書き込まれたアルファベットの続け文字には、ぞくぞくする秘密めいた美しさがあった。

（新生児室）新生児が大勢 籠かご に入って、焼きかけの今川焼みたいに並んでいる。看護婦が 餡あん 子こ でも入れるように次から次へと手際よく胸のガーゼを取り替えていた。

妙に白っぽい病室の真っ白なベッド