バグダッドは風の強い町だった。それも、東京のように、高層ビルにぶつかって 癇 が立ったような風とは違い、荒涼とした無人の土地を吹き抜けてきた、乾いた大波のような風だった。 その風が、日々の爆発の黒煙を、清掃員のような馴れた面持ちで片づけてしまう。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 ページ位置:11% 作品を確認(amazon)
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強風・暴風
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前後の文章を含んだ引用
......までも外を見たままだったことだった。 バグダッドに赴任して、洋子は、昔地理の授業で習った〈砂漠気候〉というのを、初めて身を以て知った。事前の想像にはなかったが、バグダッドは風の強い町だった。それも、東京のように、高層ビルにぶつかって癇が立ったような風とは違い、荒涼とした無人の土地を吹き抜けてきた、乾いた大波のような風だった。 その風が、日々の爆発の黒煙を、清掃員のような馴れた面持ちで片づけてしまう。が、規模が大きかったのか、今上がっている煙は、容易には絶えない。誰かが死の黒いインクを、地の底からこの世界に逆さまに垂らし続けているかのようだった。「──ダイジ......
単語の意味
荒涼・荒寥(こうりょう)
癇(かん)
癇・・・ささいなことで怒りやすい性格。イライラする気持ちや性質。
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道頓堀川が小さく波立っていた。晴れてはいたが、風が強いようであった。
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 amazon
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リボンが、冷たい潮風に千切れそうに靡いている。
吉田修一「悪人」に収録 amazon
寒い霙(みぞれ)まじりの風が荒れに荒れて終夜(よもすがら)、町の上を哮(ほ)え狂う
国木田 独歩 / 武蔵野 amazon
風が冷たい敷布のようにからだを包む
ジュール・ルナール / にんじん amazon
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