そういうやり取りが遠のいてゆき、いつしかうとうと寝ていた。 　波音と、店から聴こえてくる音楽との間に短く、強烈に夢が忍び込んできた。

夢というよりも、もう少し現実感の色濃いものであった

夢とわからないほど生々しい夢

突然、夢が場面転換する。

私は疲れて、中途半端 な気持ちで眠ってしまった。 　浅い眠りだった。 　どこかがはっきりと覚醒していて、部屋の薄暗がりの明度まではっきりとわかっていた。呼吸は深く、まぶたは閉じていた。 　でも、完全には眠れなかった。 　静かに、静かに、夢が降りてきた。 　 闇 に舞い降りる、初雪のはじめのひとひらみたいに。

寝返りをうつとベッドがわずかにぎしりと音を立てる。

心地よさそうに寝息を立てている。

昨夜は熟睡したせいか、頭がすっきりして気分がよかった。

傍で寝ている酒気を帯びた父の鼾（いびき）が喉（のど）にからまって苦しそうだ。

睡魔はまるで古代の棺の石蓋のように容赦なく彼の頭上にのしかかっていた。