昼前のがらんとした喫茶店

数えるほどの客しかない

人気（ひとげ）のない廊下を歩いて行った。廊下は僕にはホテルよりも監獄らしい感じを与えるものだった。

平日で、すいていた。

夜、十二時の浅草はしめったオブラートより寂しい。

白刃を構えたような凄み

(2年ぶりに認知症の父を訪ね、窓際に座る小さくなった父を見て)離れたところから見ると、人間というよりは、ネズミやリスの類に近い生き物のように見えた。あまり清潔とは言えないが、それなりにしたたかな知恵を具えた生き物だ。《…略…》父親だった。あるいは父親の残骸とでも言うべきものだった。二年の歳月が彼の身体から多くのものを持ち去っていた。まるで収税吏（しゅうぜいり）が、貧しい家から情け容赦もなく家財道具を奪っていくみたいに。《…略…》今目の前にいるのは、ただの抜け殻に過ぎない。温かみを残らず奪われてしまった空き屋に過ぎない。

亜美ちゃんは瞬く間にクラスでもっとも影響力のある女子になった。クラスの女子たちにとって、亜美ちゃんはファッションリーダーであり、ファッション雑誌そのものだ。

握手した手をもう一回ぎゅっと握った

人間は死ぬと、一時間に摂氏一度の割合で体温は下降する

三、四人の客が入って来た。《…略…》たちまち店内には汗の 臭いが満ちた。

蟻が小さな穴に群がり入るように、押し倒し押し返し入り口になだれ込む

（人混みに）ペンギンの集団を思い出す

通勤電車みたいに混みあっている

賑わいがすごい