なつかしい等(人名)、そのなつかしい肩や腕の線のすべてを目に焼きつけたかった。この淡い景色も、ほほをつたう涙の熱さも、すべてを記憶したいと私は切望した。
吉本 ばなな / ムーンライト・シャドウ「キッチン (角川文庫)」に収録 ページ位置:88% 作品を確認(amazon)
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失恋・恋人と別れる
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前後の文章を含んだ引用
......くりと薄れはじめた。見ている目の前で、等は遠ざかってゆく。私があせると、等は笑って手を振った。何度も、何度も手を振った。青い闇の中へ消えてゆく。私も手を振った。なつかしい等、そのなつかしい肩や腕の線のすべてを目に焼きつけたかった。この淡い景色も、ほほをつたう涙の熱さも、すべてを記憶したいと私は切望した。彼の腕が描くラインが残像になって空に映る。それでも彼はゆっくりと薄れ、消えていった。涙の中で私はそれを見つめた。 完全に見えなくなった時、すべてはもといた朝の川......
単語の意味
淡い(あわい)
切望(せつぼう)
景色(けしき)
淡い・・・味や色や香りなどが薄い。光や形がぼんやりしている。
切望・・・強く望むこと。心から望むこと。
景色・・・風景。眺め。とくに、自然の眺め。
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僕は二十分ばかりそこで彼女と立ち話をしたが、彼女に対して好意を抱いてはいけないという理由はひとつとしてみつけることはできなかった。
村上春樹 / 象の消滅「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
(好きでもない男に抱かれる)国枝はフライパンで肉でも焼くように、シーツの上の十和子の身体を軽々と何度もひっくり返した。裏向きにされて、また表返され、もう一度また裏返される、その間の息づかいの音だけが充ちる時間に、ちりちりと焼かれる肉の熱い掻痒感が十和子を攻め立てて、焦げて縮んでいく皮膚と体毛の甘ったるいにおいが鼻先に漂う気がした。髪の根から、爪の付け根から、涙腺から、すべての毛穴から濃い汗が漏れて、十和子の全身は水に漬けたようになった。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
恋って発狂することだもん。《…略…》伊吹の「好き」は私と全然違う。私みたいに発情した身体を持て余してもいなければ、狂った独占欲が破裂するわけでもない。
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