銀座へ出かけて行った。そこでは華ばなしいクリスマスや歳末の売出しがはじまっていた。 友達か恋人か家族か、舗道の人はそのほとんどが連れを携えていた。連れのない人間の顔は友達に出会う当てを持っていた。そしてほんとうに連れがなくとも金と健康を持っている人に、この物欲の市場が悪い顔をするはずのものではないのであった。
梶井基次郎 / 冬の日 ページ位置:50% 作品を確認(青空文庫)
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歓楽街・盛り場
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前後の文章を含んだ引用
......は街路から、風が枯葉を掃ってしまったあとは風の音も変わっていった。夜になると街のアスファルトは鉛筆で光らせたように凍 てはじめた。そんな夜を堯 は自分の静かな町から銀座へ出かけて行った。そこでは華ばなしいクリスマスや歳末の売出しがはじまっていた。 友達か恋人か家族か、舗道の人はそのほとんどが連れを携えていた。連れのない人間の顔は友達に出会う当てを持っていた。そしてほんとうに連れがなくとも金と健康を持っている人に、この物欲の市場が悪い顔をするはずのものではないのであった。 「何をしに自分は銀座へ来るのだろう」 堯は舗道が早くも疲労ばかりしか与えなくなりはじめるとよくそう思った。堯はそんなときいつか電車のなかで見たある少女の顔を思い......
単語の意味
歳末(さいまつ)
歳末・・・年の暮れ。年末。歳晩(さいばん)。
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花見帰りの金魚のようなお嬢さんや、紳士達が、夜の駅にあふれて、あっちにもこっちにも藻 のようにただよい仲々賑 かだ。
林芙美子 / 新版 放浪記
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