河口の鵜（う）の喉（のど）の膨らみのようになっている岸

清流が縫うように流れている。

渓流は岩にはじかれるようにあちこちに向きをかえ、ところどころに氷のように冷ややかなよどみを作っていた。

瀬の石と石との間に出来た小さい流れ

溪が瀬をなして轟々（ごうごう）と激していた。瀬の色は闇のなかでも白い。

滝壺に落下した水が純白な水けむりを巻き上げる

波打ち際が、砕ける波のしぶきで一面霧がかったようになる

静かな朝など、桶からはみ出た水が光って、まるで白刃のように新しい朝日に輝いていた。

（夜の谷川の音）ごおっという音が足下から起こる。それは杉林の切れ目だ。ちょうど真下に当る瀬の音がにわかにその切れ目から押し寄せて来るのだ。その音は凄（すさ）まじい。気持にはある混乱が起こって来る。大工とか左官とかそういった連中が溪のなかで不可思議な酒盛りをしていて、その高笑いがワッハッハ、ワッハッハときこえて来るような気のすることがある。

一面輝いた海が、きらきらと霞んでいるように見える