酒の味には、それがただのウイスキーであっても、始めから何かそこへ誘うものがある

棚には殺し屋みたいな名前の酒が並んでいた。ズブロッカは汚い服に身を包んだひどい猫背で、何度も頭を下げ謝りながらナイフでブスブス肉を刺し、独り言をつぶやきながら地下鉄に乗って帰っていきそうだし、ブラックブッシュは相手の 身体 を持ち上げコンクリートの壁にぶつけ骨を砕き死体の匂いがするまで繰り返しそうな名だ。

昔の五臓六腑に染み渡ってむせ返るような強烈な辛口の酒

私は一息にお酒をあけた。彼女はちびちびとすすっている。

（冷凍庫に冷やしていたウォッカ）グラスに注いだウォッカは、とろみがつくほどによく冷えていて、口の中に甘い熱のような刺激を広げた。

自分の弱さをごまかすように一気に酒を飲み干す

よく飲む男で、いまの乾杯でほとんどジョッキを飲み干し、もうメニューを開いて次の飲み物を選んでいる。

甘からず辛からず、梅の芳香が口中にひろがって、旅の疲れが消えるおもいがする。

ビールをグラスに注いだ。泡が収まるのを見届けてから一口で半分飲んだ。

渇いた 咽のど にビールがしみ渡った。ひどく苦い。理不尽の味だ。