丘と原は雨に煙っていた。雲がさがって、丘の頂の木を包み、突然吹く風に、低く遠く吹き散らかされた。その度に野を 蔽う雨の 条 に、 縞 が移動した。
大岡 昇平「野火(新潮文庫)」に収録 ページ位置:53% 作品を確認(amazon)
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霧・かすみ・もや
雨の景色、視界
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前後の文章を含んだ引用
......。磯波のようにまくれ返った頂上を並べた低い丘が、海岸方面に連り、道はその裏側を廻った。丘と脊梁山脈の前山との間は、出水の後の泥のような、平らな原が埋めていた。 丘と原は雨に煙っていた。雲がさがって、丘の頂の木を包み、突然吹く風に、低く遠く吹き散らかされた。その度に野を蔽う雨の条に、縞が移動した。 濡れた兵士の歩みは遅く、間隔は長くなった。濡れた靴と地下足袋はどんどん破れて、道端に脱ぎ棄てられた。しかし「履けない」という判断は人によって異るとみえ、それ等......
単語の意味
煙る・烟る(けむる・けぶる)
煙る・烟る・・・霧やかすみなどで辺りがぼやける。白煙や色のある煙がもくもくと出て、辺り一面に広がる様子。
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岡本かの子 / 河明り
霧の中に村の全景が墨絵のようにひろがっている。
尾崎 士郎 / 人生劇場 青春篇 amazon
乳色の靄が風に次第に追い払われると、
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
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雨の景色、視界の表現・描写・類語(雨・霧のカテゴリ)の一覧 ランダム5
雨の澳門、それはこの憐れな町を更にみじめにするだけです。海も町もすべて灰色に 濡れ、
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
静かな雨が野面を、丘を、樹を仄白く煙らせる
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
麦の葉が雨に濡れて緑の色を一層冴えさせる
吉村 昭 / 海の鼠 amazon
お堂の濃い茶色が、煙るように距離をなくして父の後ろにそびえていた。土産物屋の色とりどりの色彩が、さみしく 濡れていた。
吉本 ばなな / 血と水「とかげ (新潮文庫)」に収録 amazon
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顔面に当たる粉雪がとけ、目の辺りから涙のように一筋流れた。
吉田修一「悪人」に収録 amazon
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