聖堂の中は君が思うよりもずっと暗かった。ついさっき通り抜けたばかりの扉の向こうには光があふれているのに、そのうちのほんのわずかな一筋か二筋が、遠慮深げに射し込んでいるばかりだった。石の床は摩耗し、暗がりに染まって濡れたようになり、靴底にひんやりと吸いついてきた。小さな窪みの一つ一つが水滴のようだった。
小川 洋子 / 乳歯「口笛の上手な白雪姫」に収録 ページ位置:53% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
聖堂
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......悪な手の影が、まぶたをよぎってゆくのを間違いなく見た。君が浮彫の人々の苦役を少しでも軽くできたらと願い、聖堂の前に立ち尽くしているなどとは、知りもしなかった。 聖堂の中は君が思うよりもずっと暗かった。ついさっき通り抜けたばかりの扉の向こうには光があふれているのに、そのうちのほんのわずかな一筋か二筋が、遠慮深げに射し込んでいるばかりだった。石の床は摩耗し、暗がりに染まって濡れたようになり、靴底にひんやりと吸いついてきた。小さな窪みの一つ一つが水滴のようだった。 人々のお喋りは聖堂の中で一段トーンが低くなり、石の床を這い、水滴を震わせた。相変わらずガイドを中心にしてよくまとまったグループは、細長い隊列になり、ドーム形に......
ここに意味を表示
聖堂の表現・描写・類語(家・建物のカテゴリ)の一覧 ランダム5
(聖堂の柱)石の大地にそびえる大樹のような、どうしても見上げずにはいられない威厳を持つ柱だった。
小川 洋子 / 乳歯「口笛の上手な白雪姫」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「家・建物」カテゴリからランダム5
赤い屋根を翼のように拡げたサナトリウムの建物
堀 辰雄 / 風立ちぬ amazon
岡本かの子 / 母子叙情
城郭のように古い堅牢な艶光りのする木造家屋
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
村田家は街道からはちょっと引っこんでいて、前庭が広くて母屋と蔵がある、典型的な農家のつくりだった。
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 amazon
同じカテゴリの表現一覧
家・建物 の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ