矢のように外へ飛びだしました

途中で何人もの人にぶつかったがそんなこといちいち気にかけている余裕はなかった

歩道をサーキットに見立てて華麗に歩行者を追い抜く

時計の秒針と競うように

慌てふためく

はじめはブレーキ音だった。アスファルトをタイヤが滑った。ずいぶん長い間タイヤが鳴っている気がした。助手席の京子の身体が勢いよく浮いた。 　そして、どん、と衝突音がした。なすすべもない。バンパーが潰れる感触があった。 　シートベルトが肩に食い込む。浮いた身体はバウンドして、座席に跳ね返った。 　あっという間のことだった。頭の中が揺れる。突然の痛みと驚きに、怒りが瞬時に湧いた。気を失うほどではなかったが、京子は言葉も出なかった。 　しばらくしてから、ようやく運転席の青山の様子が気になる。

止まるバイクに、いくつかの後続車が倣う。

そこでブレーキがかかった。車体がつんのめり、シートベルトに身体がひっかかる。

前につんのめるようにして急ブレーキをかける

ハイヤーの滑（すべ）って来る轟（とどろき）がして、表通りで停（と）まったらしい。

ひたすら進み入ろうとするその世界は、果てしも知らぬ白濁（はくだく）の波の彼方（かなた）の渾沌未分の世界である。《…略…》どこまでもどこまでも白濁無限の波に向って抜き手を切って行く

スピードが出ない

いろんな店の品物や、電車や、自動車や人ゴミが走馬燈（まわりどうろう）のように後（うしろ）へ後へと辷（すべ）った……。

（めったに人の通らない路で人間観察なんて）僕みたいな男はよくよくの閑人なんだ

夜までどう時間を潰せばいいかを考える。

大型トラックが路上をバックするときに発する短い断続的な警告音

キーを回してエンジンをスタートさせた。フォルクスワーゲンの四気筒エンジンがしばしの眠りから覚め、ぼそぼそと着実なサイクルを叩いた。

英国の軍艦が 烟 突から僅かばかりの烟をたてながら海底に根を張っているかのようにどっしりと海面に置かれてあった。

貨物船の霧笛が、群れをはぐれた仔牛のような鋭い悲鳴を上げ始める。霧笛はそれぞれの音階に短く長く闇を貫き、山の方向へ飛ぶ。

頭の上で列車が轟々と行き過ぎる