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重竜に対して抱いていた 朦朧 とした気持は、その瞬間、恋情というはっきりした形となって千代の中で固まっていった
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 ページ位置:44% 作品を確認(amazon)
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恋に落ちる
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......竜は外の暗闇に顔を向けていたが、その表情はくっきりとガラス窓に映っていた。重竜はそうやってじっと千代を見ていたのだった。千代はガラス窓に映る重竜と目を合わせた。重竜に対して抱いていた朦朧とした気持は、その瞬間、恋情というはっきりした形となって千代の中で固まっていったのだった。 その夜は福井市内に宿をとった。重竜はいつになく口数が少なかった。 食事を済まし、炬燵で向かい合って千代は、ときおり、風にあおられた雪片が屋根や壁やガ......
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朦朧(もうろう)
千代・千世(ちよ)
朦朧・・・意識や視界、意味などがハッキリしないさま。ボーっとしていて、クリアでないさま。おぼろげなさま。ぼんやり。
千代・千世・・・千年。非常に長い年月のたとえ。千歳(ちとせ・せんざい)。「代」も「世」も「ある期間」を意味する字。
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