四角い光を切り取って据えた様な縁側の明るさ

暦をめくるように、季節で 貌 を変える庭木や下草

縁側に立ったまま、明るい初夏の日差しのさしこむ我が家の狭い庭を眺めてみた。眺めたからといって心がなごむような庭ではない。一日のうちほんの少しの時間しか日が差さないから土はいつも黒く湿っているし、植木といっても隅の方に二株か三株ぱっとしないアジサイがあるだけだ。

雨が上がり、庭の草木が洗ったようにきれいになる

（ベランダ）不透明なプラスチックの目隠し板と金属の手すり

閃きのない老いた午後の日光の遊んでいる白い天井

風で揺れるカーテンが、室内を舐める舌のように、はためいている。

誰かがドアをノックする。ノックの音は硬くそして執拗だ。

一畳ほどの玄関を照らしている天井の蛍光灯が、地虫の鳴き声のようなかすかな音を立てていた。

一軒だけ人家があって、楓（かえで）のような木が幻燈のように光を浴びている。大きな闇の風景のなかでただそこだけがこんもり明るい。