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山吹がもしゃもしゃ茂り、小枝の折れ、落葉など、雑然とかさなりあっている手入れされたことのない庭の隅に、杜若かきつばたがぞっくり揃った芽を出していた。青々したその芽生えのところだけは、特別日光がたまるかと思うほど、明るく美しく見えた。
宮本百合子 / 伸子 ページ位置:32% 作品を確認(青空文庫)
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庭・縁側・ベランダ
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前後の文章を含んだ引用
......ことそうやって、煖炉の低い焔が、時々ひら、ひら、燃え上って、あたりをぼんやり赤く照す夕闇の中にいた。  空が晴れ渡って、風が、椿つばきの艶ある葉をゆるがして吹いた。  山吹がもしゃもしゃ茂り、小枝の折れ、落葉など、雑然とかさなりあっている手入れされたことのない庭の隅に、杜若かきつばたがぞっくり揃った芽を出していた。青々したその芽生えのところだけは、特別日光がたまるかと思うほど、明るく美しく見えた。――暖かい。……眼を細め、その強い緑色の中にある明暗を眺めているうちに、不思議な烈しい感覚が伸子の全身を流れた。伸子は、喉につっかけてくるようなときめきを感じな......
単語の意味
雑然(ざつぜん)
茂り・繁り(しげり)
日光(にっこう)
雑然・・・いろいろなものが交じり合って整ってないさま。「然」は他の語の後ろに付いて、状態をあらわす字。
茂り・繁り・・・草木がたくさん育って、葉や枝が集まっていること。また、その場所。
日光・・・日の光。大陽光線。
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