流し台の隅で、野菜の皮やコーヒー豆の滓やパンの耳がぐったり重なり合っている。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 ページ位置:55% 作品を確認(amazon)
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台所・キッチン
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前後の文章を含んだ引用
......ガラスに映った体液とがぴったり重なり合う様子を、本当にべらべら説明してしまいそうになるので、口をつぐんだ。相変わらず彼の唇だけが休みなく動いていた。 彼の後ろの流し台の隅で、野菜の皮やコーヒー豆の滓やパンの耳がぐったり重なり合っている。わたしは彼の向こう側と彼の唇を交互に見比べる。そして、 ──食べる、ってことは、どうしてこんなに美しくないんだろう。── と思う。人間が起こす行動の中で、一番生......
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台所・キッチンの表現・描写・類語(室内のようすのカテゴリ)の一覧 ランダム5
流しの排水孔には角切りの小さなじゃがいもが詰まっていて、表面に油が渦を巻く汚い水が溜まっていた。そのヌルヌルして糸を引くじゃがいもを爪で挟んで取り出すと、水がようやく減り始め、鳥肉の屑は円を描いて穴に吸い込まれていった。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
小さな蛍光灯に照らされて、しんと出番を待つ食器類、光るグラス。
吉本 ばなな / キッチン「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
台所の棚に並んだ砂糖の容器や鍋に、薄い油膜が汚らしくこびりついている。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
(シンクに置かれた食べ残しの皿)そこには、朝、夫が使った食器が怠惰に積み重なっていた。ガラスのデザート皿にコーヒーカップがしりもちをついて、それにミート皿がもたれている。その隙間にナイフとフォークとティースプーンが刺さっている。わたしは美術作品を眺めるように、しばらく流し台の前に立っている。 半熟卵が一筋流れ出して、皿の縁に回虫のように張り付いている。コーヒーの飲み残しがセロリの切れ端を粘土色に染めている。ヨーグルトが、脳味噌のように固まっている。流し台は〝有機体〟にあふれている。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
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部屋の中の空気がなくなりでもしたように、急いで扉を開く
吉行 淳之介 / 砂の上の植物群 amazon
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