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コンクリートの壁に走ったひびは「どうせそのうちにそっくりとり壊されるのだから、とくに気にしないでもらいたい」と言葉少なに訴えかけているように見えた。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 ページ位置:85% 作品を確認(amazon)
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粗末な建物 ぼろい・使い古された
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......尋ねると、保安室はここではなく、通りを隔てた別棟の三階にあると言われた。教えられた別棟は見栄えのしない小さな三階建てのビルで、そこにはエレベーターすらなかった。コンクリートの壁に走ったひびは「どうせそのうちにそっくりとり壊されるのだから、とくに気にしないでもらいたい」と言葉少なに訴えかけているように見えた。ぼくはすり減った狭い階段を上り、保安室という表札のかかったドアを小さくノックした。太い男の声で返事があり、ドアを開けると、中に彼女とその息子の姿が見えた。二人は......
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