隙間風が洩れているような寒々しい感じの部屋

クラシックな造りと家具調度品が王宮の一室のように豪華

三畳ほどの台所と六畳間、ユニットバスと小さなベランダで構成された単身者用の部屋

あんまり仕切りのない家で、きょうだい五人、ざこ寝をしてた。

肌に触れる空気の微妙な変化で、雨が降っていると分かる

畳の上では何か焼いた跡らしく、点々と畳が焦げていて

身は骨と皮ばかりに痩せて、蒲団を三枚も四枚も敷いて寝ていても、畳の固さが骨にこたえて痛くてならなかった

だだっ広い家の踏めばぶよぶよと海のように思われる室々（へやへや）の畳

そこにあるものを一払（ひとはら）いに払いのけると、花壇の土を掘り起こしたようにきたない畳が半畳ばかり現われ出た。

腫物のようにぶわぶわした畳の上に

緑色笠の読書用電燈が、帳面の白い紙面や本の背革をしんと照している。

凝灰岩を四角に組んだ窓は雪のある庭に向っていた。

晩秋のしなやかな風が、レースのカーテンをすりぬけて、弟のベッドをなでている。

きい、きい、きい。白いペンキを塗られた鉄の扉を、衛門看守が開いた。

時刻は昼らしく、天井の明かりからまっすぐに日が差し込んでいた。光は何本かの太い柱となって床から直立し、その中で細かな塵が舞っているのが見えた。その光の柱は刃物で切り取られたようにくっきりと鋭角的で、南国の太陽の激しさを部屋の中に送り込んでいた。光のない部分は暗く冷やかだった。そのさまあまりにも対照的だった。まるで海底にいるみたいだな、と僕は思った。