カリッとした厚めの衣の表面を噛むと続いてフワッとした肉の柔らかさとよい香りが口の中に広がる

（ハムカツ）カツの正統を肉とするならば、純血という意味では明らかにハムカツはメンチに負ける。 　メンチは、挽き肉ではあるが、ハムに比べれば肉としての純血度は高い。

豚肉をカツレツにすることが日本に流行したのは大正の関東大震災以後のことで、それまではビーフカツレツが主導権をにぎっていたようだ。

〔美登広〕のポークカツレツは、ロースの薄切りを何枚か重ね、丹念に庖丁で叩く。だから子供の口にも年寄りの口にもやわらかかった。

そばつゆを少し甘めに味付けしたような、さらっとしたタレにくぐらせた一口トンカツ

ムネ肉一枚を使ったボリュームとこってり感が魅力。ご飯も進む。

一般的にフライ物というのは、コロッケ、メンチカツ、ハムカツ、串カツ、アジフライ、カキフライ、イカフライあたりをいい、トンカツとなると、別格という感じになる。 　フライ物には違いないが、もはやそういっては失礼、というような風格さえある。

豚肉を揚げただけのものが、これほどに、店によってちがうものか……と、おもうほどにちがう。

好物の炭焼ビフテキも、ゴムを噛むような気がした。

タレは控えめにつける。タレはあくまで肉の旨みを引き立てるもの。