(音色)「平べったい音が、丸くなった感じ」 それを聞いて、ようやく理解した。弛緩していた音が、水滴のようにきゅっと丸くなった、ということらしい。
宮下 奈都「羊と鋼の森 (文春文庫)」に収録 ページ位置:40% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
音
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......きするのは、両立するだろうか。丸くなったといえば、穏やかになって、むしろいきいきからは遠ざかる方向にあるのではないか。僕の戸惑いをよそに、そのお客さんは続けた。「平べったい音が、丸くなった感じ」 それを聞いて、ようやく理解した。弛緩していた音が、水滴のようにきゅっと丸くなった、ということらしい。言葉が通じた瞬間は、光が差すような気持ちになる。ほんとうはピアノの音色だけで通じあえればそれが一番なのだけれど。 明るい音にしてほしいとよく言われる。 はじめの......
ここに意味を表示
音の表現・描写・類語(音の響きのカテゴリ)の一覧 ランダム5
無人の会場に、丸裸のA音が放たれ、壁の内側でやがて完全に消失する。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
それを音と言い切ってしまっていいのかどうか、わたしには自信がない。もしかしたら、震動、流れ、疼き、といった言葉の方がぴったりしているのかもしれない。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
その音に関することは、発生源も音色も響き具合も何もかもがあいまいなので、わたしは言葉を失ってしまう。それでも時々、あまりのあいまいさのために心細くなり、何かにたとえてみようと思うことがある。冬の噴水の底に沈んだコインが一粒の水しぶきとぶつかった時つぶやく音、メリーゴーランドから降りた後耳の奥にあるかたつむり管の中でリンパ液が震える音、恋人からの電話が切れた後受話器を握った掌の中を真夜中が通り過ぎてゆく音……。しかし、こんなたとえで一体何人の人が、その音について理解してくれるというのだろう。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
(音色)「平べったい音が、丸くなった感じ」 それを聞いて、ようやく理解した。弛緩していた音が、水滴のようにきゅっと丸くなった、ということらしい。
宮下 奈都「羊と鋼の森 (文春文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「音の響き」カテゴリからランダム5
帽子の縁にたまった雨水が滝のような音で落ちる
川端 康成 / 掌の小説 amazon
ボールの弾む音が、不規則なときを刻むほか、あたりは溶け入るようにしずかだった・・・。
石坂洋次郎 / 青い山脈 amazon
廊下を駈ける足音が雪崩のように響き渡った。
小杉 天外 / 初すがた amazon
地響きが地の底で大太鼓でも打つ不気味さで、少しずつ少しずつ大きくなり、まっしぐらに接近してくる
杉本 苑子 / 今昔物語ふぁんたじあ amazon
同じカテゴリの表現一覧
音の響き の表現の一覧
感覚表現 大カテゴリ