無人の会場に、丸裸のA音が放たれ、壁の内側でやがて完全に消失する。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 ページ位置:8% 作品を確認(amazon)
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音
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......し、去年のツアー中に感じていたのは、何かこれまで知らなかった類の予兆であって、彼はその正体を突き止めようと、以後はリハーサルの度に、同じことを繰り返していた。 無人の会場に、丸裸のA音が放たれ、壁の内側でやがて完全に消失する。ギターのボディの振動とともに、その最後の震えまで聴き届けようとする耳には、何か、秘やかな争いごとに首を突っ込んでいるかのような感覚が残った。 この静寂の中へと、......
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その音に関することは、発生源も音色も響き具合も何もかもがあいまいなので、わたしは言葉を失ってしまう。それでも時々、あまりのあいまいさのために心細くなり、何かにたとえてみようと思うことがある。冬の噴水の底に沈んだコインが一粒の水しぶきとぶつかった時つぶやく音、メリーゴーランドから降りた後耳の奥にあるかたつむり管の中でリンパ液が震える音、恋人からの電話が切れた後受話器を握った掌の中を真夜中が通り過ぎてゆく音……。しかし、こんなたとえで一体何人の人が、その音について理解してくれるというのだろう。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
(音色)「平べったい音が、丸くなった感じ」 それを聞いて、ようやく理解した。弛緩していた音が、水滴のようにきゅっと丸くなった、ということらしい。
宮下 奈都「羊と鋼の森 (文春文庫)」に収録 amazon
それを音と言い切ってしまっていいのかどうか、わたしには自信がない。もしかしたら、震動、流れ、疼き、といった言葉の方がぴったりしているのかもしれない。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
無人の会場に、丸裸のA音が放たれ、壁の内側でやがて完全に消失する。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
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妹はフリオ・イグレシアスのレコードをかけた。 フリオ・イグレシアス! と僕は思った。やれやれ、どうしてそんなモグラの糞みたいなものがうちにあるんだ?
村上春樹 / ファミリー・アフェア「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
とっとっとっとっしずかに走るのでした。その足音は気もちよく野原の黒土の底の方までひびきました。
宮沢賢治 / 鹿踊りのはじまり
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