それを音と言い切ってしまっていいのかどうか、わたしには自信がない。もしかしたら、震動、流れ、疼き、といった言葉の方がぴったりしているのかもしれない。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 ページ位置:3% 作品を確認(amazon)
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音
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......たしの心が学生寮にさかのぼってゆく間の、ほんのわずかの時間だ。頭の中が広々とした雪の草原のように真っ白になり、高い高い空の果てで何かが微かに響いている。実の所、それを音と言い切ってしまっていいのかどうか、わたしには自信がない。もしかしたら、震動、流れ、疼き、といった言葉の方がぴったりしているのかもしれない。どんなに一生懸命神経を張り詰めても、わたしはその正体をつかむことができない。 とにかく、その音に関することは、発生源も音色も響き具合も何もかもがあいまいなので、......
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それを音と言い切ってしまっていいのかどうか、わたしには自信がない。もしかしたら、震動、流れ、疼き、といった言葉の方がぴったりしているのかもしれない。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
その音に関することは、発生源も音色も響き具合も何もかもがあいまいなので、わたしは言葉を失ってしまう。それでも時々、あまりのあいまいさのために心細くなり、何かにたとえてみようと思うことがある。冬の噴水の底に沈んだコインが一粒の水しぶきとぶつかった時つぶやく音、メリーゴーランドから降りた後耳の奥にあるかたつむり管の中でリンパ液が震える音、恋人からの電話が切れた後受話器を握った掌の中を真夜中が通り過ぎてゆく音……。しかし、こんなたとえで一体何人の人が、その音について理解してくれるというのだろう。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
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