(盛夏の稲)二尺程に延びて密生した稲が風もないのに強い熱と光との中に揺れて見えた。 「ああ稲の緑が煮えている」彼は 亢奮 しながら思った。 実際稲の色は濃かった。強い熱と光と、それを 真正面 に受け、押合い、へし合い歓喜の声をあげているのが、謙作の気持には余りに直接に来た。
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:80% 作品を確認(amazon)
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稲・秋の田んぼ
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前後の文章を含んだ引用
......ているものだと思った。 上井、赤崎、御来屋。彼は汽車の窓から飽かず外の景色を眺めて来た。盛夏の力というようなものが感ぜられ、彼は近頃に珍しく元気な気持になった。二尺程に延びて密生した稲が風もないのに強い熱と光との中に揺れて見えた。「ああ稲の緑が煮えている」彼は亢奮しながら思った。 実際稲の色は濃かった。強い熱と光と、それを真正面に受け、押合い、へし合い歓喜の声をあげているのが、謙作の気持には余りに直接に来た。彼は今更にこう云う世界もあるのだと思った。人間には穴倉の中で啀み合っている猫のような生活もあるかわりに、こう云う生活もあるのだと思った。今日の彼にはそういう強い......
単語の意味
歓喜(かんき)
歓喜・・・大喜び。心の底から喜ぶこと。
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初夏の明るい陽射しも消し尽せぬ人間の憂愁の数々に思われる。
岡本かの子 / 東海道五十三次
暮れ鈍る夏の宵の光りが、景物をほの黒く浮かせる
川端康成 / 掌の小説 amazon
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稲の穂が重そうな首を止まず動かしてはさらさらと寂しく笑う
長塚 節 / 土 amazon
白い空の下、青々とした稲穂が進行方向とは逆になびく。
羽田 圭介「ミート・ザ・ビート (文春文庫)」に収録 amazon
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最初はなにか夕焼の反射をでも受けているのじゃないかなど疑いました。そんな赤さなのです。
梶井基次郎 / 橡の花
(赤や黄に染まりかけた紅葉が混ざった庭)庭に千代紙のようにちりばめられた赤
吉本ばなな / うたかた「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
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